研究課題
放射線被ばくによるゲノム変異の理解は、放射線生物学の中心課題の一つである。しかしながら、癌のようにクローン増殖した細胞集団の解析とは異なり、個々の細胞が異なる変異を有する現象のため、その同定は容易ではない。単一細胞から全ゲノムシーケンシングを行うためには、単一細胞のゲノムDNAを、シーケンシング必要量まで正確かつ均一に増幅する必要があるが、その難易度は高く、増幅バイアス、更には、DNA増幅処理過程で起こるDNA損傷が引き起こす多数の変異が問題となっている。今回我々は、DNA増幅ではなく、細胞レベルでの増幅法として、iPS細胞樹立によるクローン化を行い、放射線によるゲノム変異を明らかにすることを試みた。ヒト皮膚線維芽細胞にレトロウイルスベクターにて初期化因子を発現させ、day 3に3GyのX線を照射し、非照射群と共にiPS細胞を樹立した。元の体細胞である線維芽細胞、非照射3株、3Gy照射2株の計5株について、全ゲノムシーケンシングを行い、SNVおよび、INDEL(本課題において、昨年度までにスクリーニング法を確立した手法により)を解析し、頻度を比較したところ、SNV・INDELいずれも非照射群に比べ、照射群において増加していた。SNVの増加率に比べ、INDELの増加率が高く、Insertion、Deletion、multiple nucleotide variation、いずれも増加していることが明らかになった。
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Nature Communications
巻: 11 ページ: 197
https://doi.org/10.1038/s41467-019-13830-x