研究課題/領域番号 |
17K20060
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
栗栖 太 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (30312979)
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研究分担者 |
鎌田 素之 関東学院大学, 理工学部, 准教授 (10386873)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 大腸菌 / 未知スクリーニング分析 / 高分解能質量分析計 / 精密質量分析 / ノンターゲット分析 |
研究実績の概要 |
大腸菌の環境水中溶存有機物による増殖試験を行うに当たり、環境水を滅菌する方法を検討した。まず、滅菌操作における有機物変化を最小限にとどめるため、ろ過滅菌のみによる滅菌を検討した。0.2um, 0.1umフィルタのろ過いずれにおいても、ろ過直後の全菌数は定量下限以下になっていたものの、1日後には10^4cells/mlまで増殖してしまうことがわかった。そこで、75oCで1時間低温殺菌処理を追加したところ、1日後も定量下限以下を保っていた。滅菌処理前後での有機物変化を、Orbitrap質量分析計で分析したところ、わずかに変化が見られた。このことから、今後大腸菌の増殖基質を探索する際には、増殖前後の有機物を比較するとともに、増殖前後で減少した有機物が、滅菌処理により生成された人工産物でないかどうかの確認も必要であることがわかった。 この滅菌方法を用い、3箇所から採取した河川水を用いて、1日間無機塩緩衝液に入れて飢餓状態としておいたE.coli K12株を植種し、培養実験を行った。また、対照試験として、大腸菌の最少培地から唯一の炭素源であるグルコースをのぞいたM9-Glu培地に植種したものも作成した。その結果、河川水中に植種したものは、無機塩培地に植種したものに比べて菌数が有意に増加しており、大腸菌が河川水中の有機物を利用して増殖可能であることが明らかとなった。また、増殖前後の試料をOrbitrap質量分析計で分析し、増殖後に減少している有機物を検出できた。 また、環境水中からの大腸菌の分離も試みた。河川水中からクロモカルト培地を用いて大腸菌を選択培養し、純化を行った。得られた菌株のうち2菌株に対して、バイオログを用いて基質利用性を評価した。その結果、K-12株と共通した基質は80%前後であり、環境水中の菌株は基質利用性が多少異なることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
計画通り、実験方法の検討と、大腸菌の培養試験を実施するとともに、大腸菌の分離も行うことができた。
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今後の研究の推進方策 |
今後の研究として、大腸菌の増殖に伴い減少した有機物成分について、可能な限りその性質を明らかにするとともに、物質の構造推定を行うことを主な目標とする。
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次年度使用額が生じた理由 |
消耗品の一部について、他研究室との共用使用により効率的に実施することができたことなどから、次年度使用額が生じた。次年度使用額については、大腸菌基質候補物質の構造推定を予定以上に拡充し、標品の購入等に活用する予定である。
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