研究課題/領域番号 |
17K20063
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研究機関 | 富山大学 |
研究代表者 |
小野 英樹 富山大学, 大学院理工学研究部(都市デザイン学), 教授 (30283716)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 廃棄物再資源化 / 環境技術 / 環境材料 / 二酸化炭素排出削減 |
研究実績の概要 |
リサイクル型高度循環製鉄を実現するためには、新たな原理に基づく鉄スクラップ中循環元素の除去方法の確立が必要である。そこで新たに、鉄と不混和な相を連続的に重ねた多重相を用い、その鉄と不混和相に温度と酸素ポテンシャル差を導入することによって循環性元素を選択的に除去する“多重相スルーリファイニング”の原理を創出することを目的としている。“多重相スルーリファイニング”では、Fe(l)-Fe(s)-Ag(l)相の3相共存状態を安定に実現する必要がある。高温電気炉中の温度勾配下において、3相共存状態を実際に作り、温度ごとの各相の関係、循環元素の濃度および分布について調査を行い、最適な条件(各相の温度、相間の温度分布)を決定した。あらかじめ作製したFe-Csatd.-Cu合金をアルミナるつぼに入れAr雰囲気の電気炉内で昇温し、全体を溶融させた。その後るつぼ内で試料下部がFe(l)相、試料上部がFe(s)相となるようの温度勾配を制御して一定時間保持しFe(l)-Fe(s)の2相共存状態とした。さらに上部からAgを添加して溶融させ保持した。実験後、試料を取り出し、Fe(l)-Fe(s)-Ag(l)の3相共存状態を観察し、これらの3相が安定して共存する条件を明らかにした。さらに3相共存状態で実験を行った後の試料断面に関してSEM-EDS分析を行い、3相共存状態でのCu濃度分布を得た。温度勾配下においてCuはFe(l)からFe(s)、Ag(l)へと順次分配されることが明らかとなり、“多重相スルーリファイニング”が原理的に可能であることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
当初計画の範囲内で進捗している。
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今後の研究の推進方策 |
“多重相スルーリファイニング”ではFe-Ag間に温度勾配を設け、Fe(l)からFe(s)-Ag(l)相を介して循環元素の除去を行う。これまでの研究によって温度勾配下でのFe(l)相、Fe(s)相とAg(l)相の3相が安定して共存する条件が明らかになり、3相共存状態でのCu濃度分布が得られている。これに基づき、「“多重相スルーリファイニング”による溶鉄中Cuの除去」について検討する。具体的には、Fe(l)-Fe(s)-Ag(l)相の3相共存状態において、Ag相(Ag中Cu)のみを酸化する実験を行う。実験結果に対してFe(l)-Fe(s)-Ag(l)相間におけるCuの移動現象解析を行い、酸化速度の律速段階を把握し、最適な酸素供給速度を決定する。そのため、まずFe(l)-Fe(s)-Ag(l)の3相が安定して共存する最適な条件に保持し、その後Ag相上部からO2ガスを供給することでAg相中Cuを酸化することを考える。このとき、保持時間、O2供給速度をパラメータとし、各相中のCu濃度を測定して解析する。実験は、あらかじめ作製したFe-Csatd.-Cu合金をアルミナるつぼに入れAr雰囲気の電気炉内に設置し、全体を溶融させる。次に炉内の温度勾配を制御してFe(l)-Fe(s)-Ag(l)相の3相共存状態とし、一定時間保持する。その後、Ag相上部からるつぼ内にO2ガスを供給して酸化する。その後、冷却後の試料をFe相とAg相の界面に垂直な断面で切断し、観察断面とする。観察断面に対しSEM-EDS分析を行い、各相中でのCu濃度の時間変化およびO2の供給速度依存性を得る。これをもとに移動現象解析を行い、酸化速度の律速段階を把握し、最適な酸素供給速度を決定する。これらを通して効果的な脱Cu法として本手法の基礎を確立する。
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次年度使用額が生じた理由 |
物品費(消耗品)が当初予定よりも少なく済んだため。次年度は、研究の進捗に伴い消耗品費が増加する見込み。
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