研究課題/領域番号 |
17K20064
|
研究機関 | 鳥取大学 |
研究代表者 |
唐澤 重考 鳥取大学, 農学部, 教授 (30448592)
|
研究分担者 |
山内 健生 兵庫県立大学, 自然・環境科学研究所, 准教授 (00363036)
中野 隆文 京都大学, 理学研究科, 准教授 (50723665)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
キーワード | 吸血動物 / マダニ / 蚊 / PCR / 沖縄 / 鳥取 |
研究実績の概要 |
1)平成29年度に鳥取県内で採集したマダニ類を用いて、体内に保持されている脊椎動物の血液DNAの塩基配列の決定を試みた。16S rRNAを標的としたプライマー(MiMammal-U)を用いて実験をした結果、139個体中72個体で哺乳類の種同定ができた。しかし、その多くはヒトであり、実験中のコンタミネーションも疑われ実験方法の検討が必要であることが分かった。 2)血液DNA解析の効率的な手法の確立のために、DNA抽出方法とPCRプライマーの検討を行った。シカから直接採集したマダニ類を供試動物として、DNA抽出方法については、採集効率は高いが費用も高いQIAGENの抽出キットと、安価に抽出できるChelex法の比較を行った。その結果、Chelex法においても血液DNAの抽出が可能であることが分かった。また、PCRプライマーについては、16S、COI、Cytbを対象とした計4ペアのプライマーを使用して実験を行い、MiMammal-Uが最も効率的にPCR増幅できることが分かった。 3)沖縄島において、8月と3月に合計24地点でマダニ類および吸血昆虫(カ、ヌカカ、ブユ)の採集を行った。平成29年度の調査に比べ、マダニ類と吸血昆虫ともに多く採集できる傾向にあった。これはCDCトラップの誘引剤に農業用の二酸化炭素発生装置を利用したことが要因の一つと考えられる。今後、これら動物の体内に保持された血液DNAを解析し、哺乳類の分布解析を行う予定である。 4)ロシア沿海地方で得られたヒルを新種として報告した。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
1)沖縄島においては、H29年9月、H30年3月、8月、H31年3月において野外採集を行い、予定通りに標本の採集が進んでいる。 2)鳥取県で得られた19,168個体のマダニ類の種同定が完了し、11種が確認された。このデータによって、各種の生活史が判明し、効率的な採集時期の決定が可能となった。 3)DNA抽出方法、PCRプライマーの検討を行い、Chelex法、および、MiMammal-Uをプライマーとして利用することで安価、かつ、効率的に実験ができることが分かった。そこで、139個体を対象に、体内に保持されている血液DNAを解析したところ、72個体で哺乳類の特定ができた。ただし、ヒトと特定された標本については、コンタミネーションの可能性も疑われるため、この点については、今後の課題として検討が必要である。
|
今後の研究の推進方策 |
1)沖縄島で採集したマダニ類および吸血昆虫の体内血液DNAの解析を行い、本地域における哺乳類の分布域の地図化を行う。また、地図化の精度を高めるために、今年度も新たな場所で採集を行う。 2)DNA解析方法の改善を行う。具体的には、DNA実験におけるコンタミネーションの可能性を検討するため、人間活動の少ない山奥においてマダニ類の採集を行い、血液DNA解析を行う。また、複数種の哺乳類の血液が混在する可能性のある成虫マダニ類の吸血源解析に向けて、アンプリコンシーケンス、および、種特異的プライマーによる解析法の確立を行う。
|
次年度使用額が生じた理由 |
計画通りに予算を執行したが、残金、9841円が生じた。小額であるため無理に費用の使用を行わず、次年度予算と合算することで、より効果的な予算使用ができると判断した。
|