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2018 年度 実施状況報告書

イオン認識・還元機能をもつナノファイバーの創出と貴金属イオンの革新的分離法の開発

研究課題

研究課題/領域番号 17K20067
研究機関宮崎大学

研究代表者

馬場 由成  宮崎大学, 工学部, 研究員 (20039291)

研究分担者 大榮 薫  宮崎大学, 工学部, 助教 (00315350)
岩熊 美奈子  都城工業高等専門学校, その他部局等, 教授 (00342593)
研究期間 (年度) 2017-06-30 – 2020-03-31
キーワードナイロンファイバー / 濃縮・還元機能 / スペーサー / 金・パラジウムの回収 / キトサンナノファイバー / 金ナノ粒子 / パラジウムナノ粒子 / バイオマス
研究実績の概要

本研究の最終目標は、有害金属や貴金属イオンを含む浸出液や廃液から、「貴金属イオンのみを固体ナノ粒子」として分離回収できる、今までにない貴金属イオンの革新的分離・回収技術の創出である。本年度も昨年に引き続き「金イオン」を対象とし、さらに「パラジウムイオン」も対象金属とし、詳細に検討を重ね、さらに金属ナノ粒子の生成反応がナノファイバーの表面、あるいはコーティング膜内での反応であるかの検証を行った。
1.濃縮・還元機能を発現する高機能性ナノファイバー(RDF)の分子設計・合成
本年度は昨年に引き続き、バイオマス廃棄物であるキトサンを原料にして、水相に容易に溶解する「カルボキシキトサン誘導体」、および自らがキレート形成機能と還元機能を有している天然素材である「タンニン」を用いてナイロンファイバーをコーティングし、高比表面積で「濃縮・還元機能」を有する高機能性ナノファイバーを創出し、さらに、「官能基の効果」を明らかにするために官能基を固定化するためのスペーサー鎖長(自由度の確保)の最適化を行った。
2.濃縮・還元機能を有する高機能性ナノファイバー(RDF)による貴金属イオンの分離・回収(機能性評価)
今年度は貴金属イオンとして「金とパラジウム」を対象にしたので、室温でこれらの金属イオンを含む酸溶液中に、濃縮・還元機能を有するナノファイバー(不織布)を加えてかき混ぜると、ファイバー上に金が濃縮され、徐々に金粒子がナノファイバー表面に形成された。パラジウムは黒っぽい粉末が溶液中に分散する状態が観測された。その溶液をろ過し、金とパラジウムの粉末として回収することができた。RDFは回収後、再生され、環境調和型新材料として再利用できると思われる。金の収率はほぼ80%以上であったが、パラジウムについては20-30%の収率であった。
今後は、パラジウムの収率を増加させる工夫が必要である。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

1: 当初の計画以上に進展している

理由

ナイロンとの相溶性がよい「タンニン酸やキトサン誘導体」がナイロンナノファイバーの重量の半分以上固定化され、微小空間に「濃縮・還元・脱離」の3機能を集積した場所の確保は、「水溶液中の金やパラジウムイオン」を「固体の金やパラジウムのナノ粒子」にするのに大きく貢献できることを示唆している。金イオンがタンニンに吸着することが必須だと思われるが、金のナノ粒子の形成はある程度の距離がないと容易に始まらないこともわかってきた。これはタンニン酸が「保護コロイド」の役割をしているのではないかと予想している。
一方、ナイロンナノファイバーにキトサン誘導体を固定化する際、アンカーの役割をする長鎖アルキル基を導入したキトサン誘導体ナイロンナノファイバーについても、金イオンを選択的に吸着し、それを還元剤中にしばらく置いておくと、金のナノ粒子らしきものが、表面や表面近くに観察できた。特にキトサンの場合には金イオンが吸着すると考えられる吸着座は「規則的に配列された官能基(-NH2)」と「高度に制御された細孔構造」が金やパラジウムのナノ粒子の大きさや形状にも大きく影響しているようだ。さらに、「カルボキシル基やリン酸」のような新たな配位子を導入した新規なキトサン誘導体を用いて、ナイロンとハイブリッドした「キトサン誘導体膜」の作成を詳細に検討した。使用したキトサン誘導体の吸着選択性はそのまま発現され、またその強度についても工業的なモジュール化に十分な強度であることが明らかとなり、特許申請中である。さらに、金、パラジウム、白金が混合しているpH5の塩化物溶液から吸着すると、金イオンだけが吸着され、その膜を各種の還元剤に浸漬すると、各種の形状をしたものやナノ粒子からマイクロ粒子までキトサン膜の表面に作成することができた。この機構を如何に明らかにできるかが、大きなもう一つの課題となろう。

今後の研究の推進方策

3.濃縮・還元機能を有する高機能性ナノファイバー(RDFを用いた分離回収システムの実サンプルへの応用
これまでの多くの成果は、「当初の計画以上に進展している」と判断している。最終年度の今年度は「吸着・還元・脱離」を示した「タンニン」ではなく、「キトサン」と「ブチラール』を自己組織化ポリマーとしてナイロンナノファイバーに「コーティング」を行い、次に「キレート形成能+還元能力」を持っている、例えば硫黄アミノ酸であるシステインやチオール基のような化学構造を持った官能基を導入し、貴金属イオンの濃縮・還元機能の評価行う。
前年度までに得られた基礎データをもとに、貴金属イオンの分離回収システムを構築し、実サンプルとしてメッキ廃液や廃電子機器に含有する貴金属・レアメタルの分離・回収を行う予定である。特に貴金属イオンの非常に希薄な濃度領域でさえも、「濃縮⇒還元⇒ナノ粒子形成」機能が発現し、本法が極希薄溶液にも適用できることを検証し、上述したプロセスの中で「金属イオンの還元」という現象が起こるためにはナノファイバーの表面および内部における「濃縮」というプロセスがいかに重要であることを検証したい。
また、今年度は、これらの基礎データと応用データに基づいて、銅、ニッケル、コバルトおよび金混合系からの実用化試験を行い、本分離・回収システムが高効率的な革新的技術であることを検証する。今年度の後半では、ターゲットを貴金属だけでなく、水環境汚染重金属にも応用し、これらに関する基礎データを集積し、本分離・回収システムの実用化に向けた検討も同時に遂行する計画である。

次年度使用額が生じた理由

タンニン酸やナイロンナノファイバーにキトサンを固定化する際のアンカーの役割をする長鎖アルキル基を導入したキトサン誘導体ナイロンナノファイバー、さらに、新たな配位子を導入した新規なキトサン誘導体を用いて、ナイロンとハイブリッドした「キトサン誘導体膜」の合成に使用した「ナイロン」「ブチラール」「キトサン」および「タンニン」の素材については各企業から「サンプル」として提供頂いたので材料費はほとんど使用することはなかった。さらにナノファイバー装置は研究室に数年前に購入したものを使用し、吸着材の製造費用は安価に済ますことができた。したがって、当初の予算額よりも安価に研究をすすめることが出来た。また、研究員の育休などがあったが、特別に優秀で経験豊富な研究員を雇用できたので、本研究を大いに進めることができた。
(使用計画)
今までに得られた基礎データをもとに、貴金属イオンの分離回収システムを構築し、実サンプルとしてメッキ廃液や廃電子機器に含有する貴金属・レアメタルの分離・回収を行う予定であるが、これらの金属を含んだ実サンプルの作成に費用がかかり、さらに、これらの基礎・応用データに基づいて、混合系溶液として排出された汚染水を使用してスケールアップした実用化試験を行う必要があり、本分離・回収システムの実用化に向けた検討も同時に遂行する計画である。そのため、研究員の雇用も含めて予算を使用する計画である。

  • 研究成果

    (2件)

すべて 2019 2018

すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (1件)

  • [雑誌論文] キトサン膜を用いた金イオンの吸着および膜からの金ナノ粒子の分離回収2019

    • 著者名/発表者名
      鹿屋 京平,馬場 由成
    • 雑誌名

      化学工学論文集

      巻: 3(vol.45) ページ: 123-126

    • DOI

      https://doi.org/10.1252/kakoronbunshu.45.123

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [学会発表] 活性炭への化学修飾による高機能性吸着材の開発と有機化合物および金属吸着能の評価2018

    • 著者名/発表者名
      鹿屋 京平,塚﨑 孝規,大島 達也,馬場 由成
    • 学会等名
      化学工学会 第50回秋季大会

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公開日: 2019-12-27  

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