研究課題/領域番号 |
17K20072
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研究機関 | 日本大学 |
研究代表者 |
岩淵 範之 日本大学, 生物資源科学部, 准教授 (90328708)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | Rhodococcus / 有機溶媒耐性 / 非水系代謝 / 溶存酸素 / 耐熱性 / 有機相での生育 |
研究実績の概要 |
Rhodococcus属細菌は、有機溶媒に対する耐性および分解や変換、資化を含む代謝能を有することから、石油代替のエネルギー創成技術や省エネルギー化技術への利用が期待されている。 申請者は、Rhodococcus属細菌が難揮発性有機溶媒に優れた耐性を有し、かつ、細胞がアルカン相に転移して生育できることを見出し、またその後の研究により、同属細菌の約7割が有機溶媒中で生育できることを明らかにした。また一昨年度の研究では、アルカン相の中で生きている細胞が、アルカン相の溶存酸素を利用して呼吸していることが示された。 一方昨年度の研究で、アルカン相に転移した細胞が高度の耐熱性を有することを見出した。具体的には、R. erythropolis PR4株を培地/アルカン二相培養系で培養し、その培養液を100℃で10分以上加熱したところ、一部生き残る菌が存在した。コントロールとしてアルカンを添加しなかった培養系の細胞は、耐熱性を示さなかったことから、PR4株の細胞がアルカンに転移することで耐熱性が誘導されたものと考えられた。このことを踏まえ、本年度の研究では、この耐熱性の誘導が同株だけの特有の性質か否か、アルカン以外の有機溶媒でも同様の現象が起こるのかどうかについて、検討を加えた。 種の異なるRhodococcus属細菌6株について、培地/アルカン二相培養系で培養し、十分に生育した後、その培養液を100℃で10分間加熱した。その後培養液を放冷し、一部を取って画線植菌したこところ、供試した全ての条件で菌体の生育が確認された。一方で、コントロールとして用いたアルカンを添加しなかった培養系を用いた実験では、菌体の生育は確認できなかった。これらのことから、Rhodococcus属細菌の細胞はアルカン相に転移することで熱耐性が誘導されることが示された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の過程で見いだされたRhodococcus属細菌の熱耐性を遺伝子発現の側面から検討するためRNA-seqを外注で行った。しかしながら、2020年度はコロナ禍のため、外注分析が思うように進行しなかった。
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今後の研究の推進方策 |
コロナ禍の影響もあり、研究期間の再延長の手続きを行った。RNA-seq解析は引き続き行われており、結果を受け取り次第、解析する予定である。解析は、加熱処理条件で特異的に発現している遺伝子群を明らかにし、熱耐性機構を考察する予定である。
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次年度使用額が生じた理由 |
本研究の過程で見いだされたRhodococcus属細菌の熱耐性を遺伝子発現の側面から検討するためRNA-seqを外注で行った。しかしながら、2020年度はコロナ禍のため、外注分析が思うように進行しなかった。 2021年3月後半、緊急事態宣言が解除され、徐々に外注分析も進みだしているとの報告を受けていることから、結果が納品され次第、残りの解析を行う予定である。
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