研究実績の概要 |
本研究では,申請者らが開発したリンパ節腫脹マウスであるMXH10/Mo-lpr/lprマウスを使用して, 酸素バブルと超音波を用いた転移リンパ節に対する新しい放射線治療法の開発を目的にする.本年度は,1.酸素バブルの作製と評価,2.転移リンパ節での酸素分圧測定と病理解析を実施した. 1.酸素バブルの作製と評価 酸素バブルの基本構造は, リポソームを基本として, 膜組成成分をDSPC / DSPG / DSPE-PEG-(2k)OMeとし, DSPC / DSPGの成分比を変えた. SPC / DSPGの成分比を変えることで膜の硬さを制御すことが可能になった. 酸素バブルのゼータ電位と粒径はゼータ電位・粒径測定システムで計測した. 2.転移リンパ節での酸素分圧測定と病理解析 腫瘍細胞としてKM-Luc/GFPマウス悪性線維性組織球腫様細胞およびFM3A-Lucマウス乳がん細胞を使用した.MXH10/Mo-lpr/lprマウスの腸骨下リンパ節に腫瘍細胞を移植して, リンパ管を経由し固有腋窩リンパ節に転移を誘導した.転移の進行は生物発光イメージング法および小型動物用高周波超音波イメージングで評価した. 作製した酸素バブルを副腋窩リンパ節に投与することで, 副腋窩リンパ節から固有腋窩リンパ節にリンパ管を介して送達させた.酸素バブルの注入量・注入速度,固有腋窩リンパ節および副腋窩リンパ節の大きさから固有腋窩リンパ節内の酸素バブルの流動, 分布, 貯留時間を評価した. 低酸素状態 (pimonidazole 染色), 血管分布(抗CD31染色), リンパ洞の分布(抗LYVE-1染色) から低酸素状態と血管・リンパ洞の空間分布を明らかにした.
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今後の研究の推進方策 |
リンパ行性薬剤送達法を用いた酸素バブル送達と放射線治療を併用した転移リンパ節の治療法の開発を目指す. 今年度通りに, KM-Luc/GFPマウス悪性線維性組織球腫様細胞およびFM3A-Lucマウス乳がん細胞を使用する.腸骨下リンパ節に細胞を移植し, 固有腋窩リンパ節に転移を誘導する.転移の確認は, 生物発光イメージング装置を使用して固有腋窩リンパ節のルシフェラーゼ活性を測定し, 転移進行を評価する. つぎに副腋窩リンパ節から固有腋窩リンパ節に酸素バブルを送達させて,破壊用超音波で酸素バブルを破壊する. その後, X線照射装置を用いて固有腋窩リンパ節にエックス線を照射する.抗腫瘍効果を定量化するために,生体発光イメージング法, 造影高周波超音波, 工業用micro-X線CTを併用し形態像解析ならびに病理診断 (HE染色, 抗HIF1-α染色, 抗CD31染色, 抗LYVE-1染色)をおこなう. 腫瘍縮退, 血管密度の縮小, 低酸素領域を評価することで抗腫瘍効果を評価する.酸素バブルの標的性を高めるために, 血管内皮細胞成長因子C (VEGF-C)およびルシフェラーゼ遺伝子を強発現するKM-Luc/VEGFC細胞およびFM3A-Luc/ VEGFC 細胞を樹立し,この細胞を標的とした血管内皮細胞増殖因子受容体3(VEGFR3)標的性酸素バブルを開発する. 今年度の実験に準じ, 転移リンパ節の治療をおこない, 抗腫瘍効果を評価する. また,実験終了時に肝機能としてALT, BUN, T-Bil値を調べ,腎機能としてはBUN値を調べる.
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