研究課題/領域番号 |
17K20081
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研究機関 | 東北大学 |
研究代表者 |
高田 雄京 東北大学, 歯学研究科, 准教授 (10206766)
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研究分担者 |
清水 良央 東北大学, 歯学研究科, 助教 (30302152)
高橋 正敏 東北大学, 歯学研究科, 助教 (50400255)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | γ相 / 窒素 / 固溶 / オーステナイト / フェライト / 磁気回路 / レーザー / 組織誘導 |
研究実績の概要 |
代表者らは、レーザー描画することで小型で高精細な局所的磁場を高磁束密度で供給できる磁気回路の開発(特開2014-073302)に成功し、組織誘導デバイスとして応用することを試みてきた。その過程で、静磁場刺激による骨再生の促進や血管誘導の可能性を得ている。本研究課題では、局所的静磁場刺激が細胞ケモタキシスに及ぼす効果を磁束制御(暴露形状、向き、間隔、磁束密度など)の観点から明らかにし、静磁場刺激で誘導方向を高精細に制御できる組織誘導デバイスの開発を目指す。特に、細胞ケモタキシスに最適な磁気回路設計を行い、磁束の方向や密度を高精細にデザイン制御した静磁場が、骨牙細胞やヒト血管内皮細胞の誘導方向に及ぼす効果を調べ、このような静磁場が方向性を有する生体組織誘導に応用できる可能性を明らかにする。 本研究は、レーザー描画磁気回路の実験と生体組織誘導実験に分けられる。平成29年度は、シミュレーションによる磁気回路の設計および静磁場の制御を中心とし、磁気回路の素材となるN固溶の高耐食性オーステナイトステンレス鋼の作製を中心に行った。レーザー描画については、照射によって相変態が生じるかどうかを確認するにとどまった。 基材となるフェライト系ステンレス鋼のSUSXM27(Fe-26Cr-1Mo)を1150℃の高真空(5X10-2Pa)中で10分加熱後、0.1MPaの窒素ガス中で1~10時間加熱し、窒素固溶相(γ相)の生成を行った。厚さ1mmの板状試料では、窒素の固溶速度が約100μm/hr.であることが明らかになったため、6~10時間の加熱ですべてがγ相である1mm厚の板状試料を得ることができ、窒素固溶によるオーステナイト化に成功した。 現有装置でレーザー照射を試みたが、融解しない範囲ではフェライト相への変態は生じず、一部融解する必要性が明らかになった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
歯科用磁性アタッチメントのヨーク材に用いられている磁性を示すフェライト系ステンレス鋼のSUSXM27(Fe-26Cr-1Mo)に窒素を気固反応により固溶させ、非磁性を示す窒素固溶オーステナイト系ステンレス鋼の製作を行った。40mm×10mm×1mm 厚のSUSXM27 を準備し、0.1MPaの窒素雰囲気中で1150℃に6~10 時間加熱後、40L/minの窒素ガスを吹き付け冷却した。X 線回折装置(本年度購入)を用いて合金相を確認し、すべてがγ相の非磁性のオーステナイトステンレス鋼である結果を得た。 しかしながら、科研費採択が遅かったため、窒素固溶試料の製作に費やす時間が短くなり、またX線回折装置の導入も遅くなったことから、γ相の確認が年度末になってしまい、計画通りに実験を遂行できなかった。そのため、レーザー描画については、γ相からα相への変態が生じるかどうかの確認に留まり、照射条件及び描画精度まで到達できなかった。
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今後の研究の推進方策 |
一部遂行の遅れが生じているレーザー照射については、本研究課題に費やす実験時間を幾分増加することで対応する。融解しない程度のレーザー照射では、一旦固溶した窒素を瞬時に追い出すことができず、γ相からα相への変態を十分に起こすことができなかったが、表面層の一部を融解することでα相を得ることが出来た。当初の予定では、表面を融解することなく描画することを計画していたが、表面の極上層部をわずかに融解することで描画を進め、目的とする高精細磁気回路を製作する。
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次年度使用額が生じた理由 |
X線回折装置は高額なため、レンタル機器で利用する計画であったが、他の科研費との共同購入が可能になったため、使用頻度の多さから新規購入に切り替え、高額な消耗品の購入を抑えたことから次年度使用額が生じた。有限要素法プログラムにより、磁気回路のシミュレーションを行っているが、現用の計算機では要素数を増やすことができないため、新規計算機購入に使用する。
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