研究課題
細胞移植治療では、移植した細胞が生着して機能だけでなく、移植細胞がからの分泌因子が疾患治療に大きく関わっていることが示唆されている。中でも近年、細胞外小胞(EV)の役割が注目されている。そこで、本研究ではEVを解析し、そこから治療に関与する因子を同定することを目指した。より優れた治療因子の同定を目指す上で、EVを分泌する細胞の状態が重要となるが、ここではより生体に近い環境を得るため3次元培養したスフェロイド細胞を用いた。また、疾患治療に優れた効果を示す間葉系幹細胞(MSC)を用いた。MSCスフェロイド由来EVと、単層培養MSC由来EVの数を揃えて、機能を評価したところ、スフェロイド由来EVで、単層培養由来EVと比べて、より強い抗炎症作用や骨分化誘導作用を認めたことから、前者に優れた治療機能を持つ因子が含まれていることが想定された。そこで、EV機能に大きな役割を果たすとされるマイクロRNA(miRNA)の網羅的解析を行った。すると、両者で発現量が大きく異なるmiRNAが100個以上同定され、その中には、分化誘導、抗炎症反応に関わるmiRNAも多数含まれていた。さらに、発現量が多いものの、これまで報告されていなかったEVも同定され、高機能な治療因子である可能性も高い。このように本手法が新規治療因子を探索するために有用であることも示唆された。さらに、同定されたmiRNAの中から2つを抽出し、その抗炎症機能を調べたところ、2種のmiRNAが相乗的に抗炎症作用を示すことが明らかとなった。すなわち、細胞移植のメカニズム解析をすることで、その治療に大きく寄与している因子を同定することができれば、細胞を用いることなく、細胞移植と同様の効果を得られる可能性が示された。今回の戦略は、細胞移植に伴う経済的コストや安全性の問題を回避し、より幅広く再生医療を応用する優れた戦略の創出へと展開できる。
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