本研究は、膜タンパク質の生理的構造を維持できるウイルス様粒子(VLP)に着目し、これを次世代医薬として期待される核酸抗体「RNAアプタマー」の新規選抜材料とすることで汎用的な膜タンパク質結合分子創製技術基盤を確立することを目的とする。本年度は、昨年度の技術基盤の構築に引き続き、創薬標的として困難でありながら需要の高い数種のGタンパク質共役型受容体(GPCR)を標的としてアプタマー選抜技術の最適化と受容体に対して機能阻害効果を発揮する分子探索を行った。最適化では、非特異的な結合分子、非標的に特異的に結合する分子を取り除くため、非標的のGPCRを発現するVLPを用いて効果的に除去する条件を見出した。またハイスループットシーケンサーで解読した膨大な情報量を活かすため、アプタマーに特化した解析ソフト(doi: 10.1038/mtna.2015.4.)の利用によって配列的特徴が異なる幅広い候補分子を効率的に抽出する解析手段を構築した。また、GPCRに対する機能阻害効果を検証するため、細胞内のcAMPおよびカルシウムの濃度変化を解析するセルベースアッセイも最適化した。その結果、GPCRに対して機能阻害効果を持つ分子を複数同定する事に成功したことに加え、その中の分子の一部は微弱なアゴニスト活性を併せ持つパーシャルアゴニストであることを示唆する従来のアプタマーには見られない興味深い結果を得ることができた。現在、当該分子に対する詳細な解析を進めている。このように本研究課題では、膜タンパク質のなかでも特異的結合分子の創製が困難とされるGPCRを標的として、VLPという新たなアプタマー選抜材料、それに対する選抜技術や配列解析手法などの最適化によって、目的とする膜タンパク質に対するアプタマー選抜技術基盤を構築することができた。
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