研究課題/領域番号 |
17K20090
|
研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
高橋 宏知 東京大学, 先端科学技術研究センター, 准教授 (90361518)
|
研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
|
キーワード | 聴覚 / 脳 / 電極 |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,ラットを動物モデルにして,(1) 脳に直接電気刺激を与えたときに,意識にはのぼらない刺激(脳内ステルス刺激)のパラメータを明らかにし,(2) この脳内ステルス刺激により脳活動を調整したり知覚を操作したりする技術の基盤を築く. 初年度に,トレーニング無しに簡便に電気刺激で生じた知覚を確かめる手法として,プレパルス抑制(prepulse inhibition;PPI)を確立した.PPIでは,驚愕反射が起きる程度大きい刺激の前に弱い感覚刺激が先行すると,驚愕反射が抑制される.しかし,PPIが意識にのぼる知覚の証拠であることは示されていなかった. 本年度は,動物のプレパルス抑制と聴知覚との関係性を,オペラント学習を利用した聴力推定の実験系を新たに構築することで初めて明らかにした.音響曝露 (10 kHz) による音響外傷・難聴モデルを作成し,音響曝露前後のプレパルス抑制を計測した.その結果,プレパルス抑制でも,オペラント学習でも,動物に32 kHz付近に難聴の傾向を確認した. また,ラット頭部に固定具および聴覚野硬膜上に16チャンネルμECoG電極アレイを埋め込み,覚醒・麻酔下で脳活動の慢性計測できる実験系を構築した.閾値付近の音提示に対して,知覚を報告した試行と知覚を報告しなかった試行を比較したところ,中潜時反応には有意な差異を認めなかったが,その後に現れるP3波およびLate slow waveは知覚を報告した試行でのみ確認できた.これらの実験結果から,本研究では,ラットを対象として,意識と相関する神経活動を探索できる実験系を構築でできた.
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の目的は,ラットの脳に直接電気刺激を与えたときに,意識にはのぼらない刺激(脳内ステルス刺激)のパラメータを明らかにすることだった.当初の研究計画通り,主な検証は行動実験で進めていたが,これまでに得られた行動実験の結果を正確に解釈し,実験目的をより精緻に達成するためには,電気刺激で賦活された神経活動を計測する生理実験が追加で必要と判断するに至った.
|
今後の研究の推進方策 |
電気刺激で直接賦活された聴覚野の神経活動を計測するために,これまでに取り組んできた電気計測に加えて,光学計測も検討する.
|
次年度使用額が生じた理由 |
本研究の目的は,ラットの脳に直接電気刺激を与えたときに,意識にはのぼらない刺激(脳内ステルス刺激)のパラメータを明らかにすることだった.当初の研究計画通り,主な検証は行動実験で進めていたが,これまでに得られた行動 実験の結果を正確に解釈し,実験目的をより精緻に達成するための追加実験が必要であると判断し,次年度使用額が生じた。次年度は,更に,電気刺激で賦活された神経活動を計測する生理実験を行うこととする.
|