近接場光は、微細構造近傍に局在する電磁場であり、従来は、この局在性を活かした高空間分解能顕微鏡の開発が行われてきた。研究代表者は、近接場光の持つ、空間的に非一様な電場・磁場分布によって局所的な磁気モーメントが生成されることを明らかにしている。本研究では、この、近接場光誘起の磁気モーメントを核磁気共鳴画像法(MRI)に活用したアクティブ制御超解像MRIの実現を目的として研究を行った。従来のMRIでは明瞭な画像を得るために造影剤が利用されるが、近接場光(ナノ磁石)を利用することで非磁性材料も造影剤としての機能発現が可能となる。近接場光は、光照射時にのみ誘起される、つまり造影剤として機能が光照射時のみで発生するため、光照射のオン・オフで造影効果が制御可能となる。従来の不可逆的な操作であった造影の考え方を覆し、造影・非造影のMRIを交互に実施して継時的な変化を追跡する新たなMRI診断技術の実現が期待される。 昨年度までに、微細構造を有する近接場発生用コイルをMRI装置内に配置することで、MRI画像のコントラストが向上することを確認することに成功した。今年度は、MRI画像のさらなる高コントラスト化を実現するために、磁気プローブを用いて、実際に近接場光発生用コイルにおける微細構造での磁場増強効果の確認を行った。その結果、シミュレーションで得られた結果を支持する位置での磁場増強の効果を確認することに成功した。
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