研究課題/領域番号 |
17K20092
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
牛田 多加志 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 教授 (50323522)
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研究分担者 |
古川 克子 東京大学, 大学院工学系研究科(工学部), 准教授 (90343144)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | テラヘルツ時間領域分光 |
研究実績の概要 |
生体組織の非侵襲計測においては,MRI,超音波,X-CTなどのモダリティを用いた研究は多く存在するが,テラヘルツ波を用いた研究は未だ端緒についたばかりである.テラヘルツ波は,遠赤外の領域にあり,生体組織への透過性が良好であり,また光子エネルギーも低い.そして,水分子の分子間振動,分子内振動のエネルギー帯とオーバーラップするため,生体組織の組織形成に関する情報を得ることが可能と考えられる.本研究においては,テラヘルツ時間領域分光システムに偏光分光・円二色性分光を組み込み,それら2種類の分光を高速・同時計測可能なシステムを構築することを目的としている.それにより,組織異方性の情報も得られると期待される.通常のテラヘルツ波発振は1軸構造PCA(Photoconductive Antenna)を用いて実現するが,本研究では新たに考案した(特願2016-075571)直交2軸構造PCAを製作し,その対向する2対のPCAに高圧・高速変調バイアス発生回路を用いて位相をずらしながらバイアス電圧を入力することでテラヘルツ円偏光波の発振を目指す.また,サンプルを透過またはサンプルから反射したテラヘルツ円偏光波を検出するアンテナも新たに考案し(特願2016-075572),高感度電流検知回路と電流電圧回路を組み込み,それらの回路をロックインアンプで制御することでテラヘルツ円偏光波の検出を行う.このシステムを用いて,生体組織(生体軟骨および再生軟骨)の組織形成度,力学的特性のみならず組織異方性をも定量的に評価可能であるかどうかを明らかにする.平成29年度においては,偏光分光・円二色性分光(VCD/ORD機能の設計・製作・実装,および偏光検出可能テラヘルツデテクターの設計・製作・実装を実施した.さらに,偏光分光・円二色性分光とテラヘルツ時間領域分光の同時高速計測可能な要素技術の開発を進めた.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
偏光分光・円二色性分光(VCD/ORD)機能の設計・製作・実装をおこなった.具体的には,直交2軸構造PCA(Photoconductive Antenna)を製作し,その対向する2対のPCAに高圧・高速変調バイアス発生回路を用いて位相をずらしながらバイアス電圧を入力することでテラヘルツ円偏光波の発振を行った.また,偏光分光・円二色性分光とテラヘルツ時間領域分光の同時高速計測可能な要素技術の開発を進めた. さらに,偏光検出可能テラヘルツデテクターの設計・製作・実装を進めた.具体的には,発振されサンプルを透過または反射したテラヘルツ円偏光波を検出するディテクターに高感度電流検知回路および電流・電圧変換回路を設計・製作し,テラヘルツ時間領域分光システムに実装した.
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今後の研究の推進方策 |
偏光分光・円二色性分光とテラヘルツ時間領域分光の同時高速計測データから,生体組織の組織形成度および組織異方性を定量的に評価可能な診断技術の構築を進める.具体的には,生体組織として軟骨組織にターゲットを絞り,ブタ膝関節から関節軟骨を採取し計測サンプルとする.また,ブタ軟骨細胞を用いて再生軟骨を作製し,同じく計測サンプルとし,生体軟骨組織の採取および軟骨細胞を用いた再生軟骨組織の作製を実施する.それらのサンプルを用いて,再生軟骨組織の組織化学的評価,生化学的評価,力学的評価を行い,偏光分光・円二色性分光とテラヘルツ時間領域分光の同時高速計測データとの比較検討を実施する.
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年3月,ブタ軟骨細胞を用いて再生軟骨を作製する際,使用する試薬の国内在庫が欠品となり,未使用額が生じた.試薬は平成30年4月に納品予定となっており,未使用額は物品費として次年度に使用する.
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