研究実績の概要 |
サーミスタの経年変化による計測精度低下の問題を解決するために,温度標準を内蔵したサーミスタ体温計の開発を目的とした.温度標準の具体的な方策として,低融点金属のガリウムに注目した.プロトタイプ作製のための基礎的検討として金属Gaをコーティングしたサーミスタを試作し,相転移温度確認などの基礎実験を行った. 液体Gaは大部分の金属を脆化させるうえに, 濡れ性が非常に高く取り扱いにくいという問題が有る.そこでこれを解決するために, ガラス被覆されたサーミスタ(NXFT15XH103FA2B050, (株)村田製作所)のヘッド部にGaをコーティングしさらにポリウレタンで保護する方法を独自に考案し, Ga封入サーミスタの具現化を可能にした.試作したサーミスタ横断面を光学顕微鏡により観察したところ、サーミスタの周りのGa層がポリウレタンの層でしっかりと封入されていることが確認された. そしてこの試作センサを用いて体温(腋窩温)を測ったところ,室温では固体であったGaは体温計測開始とともに温度上昇し,融点である29℃付近に達した時点で相転移に起因すると思われる平坦部が約30秒間観察され,その後センサ出力は体温と平衡するまで上昇した. 以上の結果から、本法原理の妥当性が確認されるとともに、較正機能内蔵サーミスタ体温計具現化の見通しを得ることができた.
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