研究課題/領域番号 |
17K20099
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研究機関 | 名古屋大学 |
研究代表者 |
森 健策 名古屋大学, 情報学研究科, 教授 (10293664)
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研究分担者 |
小田 昌宏 名古屋大学, 情報学研究科, 助教 (30554810)
三澤 一成 愛知県がんセンター(研究所), 分子腫瘍学分野, 研究員 (70538438)
古川 和宏 名古屋大学, 医学部附属病院, 助教 (70624310)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 医用画像処理 / 画像解剖 / マイクロCT |
研究実績の概要 |
平成30年度はマイクロ画像解剖学の創成に向けた以下の研究を実施した。 (1) 数理モデルに基づいた3次元マイクロCT画像からの層構造抽出手法の実現:消化管壁面の層構造を対象としてマイクロ解剖構造認識手法を開発した。3層の胃壁面を自動識別し画素単位の分類を行う方法を検討した。ここでは、深層学習の手法を用いて胃壁の層構造を自動的に分類する手法を実現した。加えて、構造に着目した微細構造分類方法を開発し、マイクロCT像に対して適用した。これにより、マイクロCT画像を基にした解剖構造抽出手法の基礎的な手法が実現できた。 (2) 教師なし学習に基づいたマイクロ解剖構造の認識手法の実現:マイクロCT画像等は手動による正解情報付与が難しい。そこで教師なし学習による解剖構造の認識手法を開発した。画像の局所テクスチャパターンに基づいて特徴空間でのクラスタリングを行い、層構造を認識する手法を実現した。 (3) マクロ-マイクロ解剖構造レジストレーション手法の実現:CT画像等に含まれるマクロ解剖構造とマイクロCT画像等に含まれるマイクロ解剖構造の対応付けを行う手法を検討した。画像間の特徴的な解剖構造を用いて対応付ける手法を開発した。特に、血管などの解剖学的構造に着目して、臨床の場で撮影されるCT画像と高精細なマイクロCT画像とを帯同づける手法が実現できた。これによって、マクロCT像とマイクロCT像との間の関係性を容易に把握することが可能となった。さらに、マクロCT画像からマイクロCT画像で撮影されたかのような画像を生成する超解像についても併せて研究を進めた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
マイクロ画像解剖学の創成に向けた各研究項目は予定通り進展している。昨年度作成した3次元マイクロ画像データベースを利用し、マイクロCT画像からの正常・異常組織の教師なし分類、層構造の識別、マクロ-マイクロ画像間のレジストレーションの検討を行った。それぞれの検討において深層学習等を活用し、データベースに基づく高精度な識別手法を実現している。 マイクロ画像からの解剖構造認識においては今年度の研究の中で十分な成果が得られた。これを基にして、次年度からはマイクロ解剖構造情報及び対応付けされたマクロ解剖構造情報を利用して、診断・治療支援・医学教育支援などの研究を実施する予定である。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の検討結果を基に、マクロ解剖画像からのマイクロ解剖画像の推定手法の実現、マイクロ解剖情報の診断治療支援における利用法の検討、医学教育におけるマイクロ解剖情報利用検討等を行う。最終的に、マイクロ解剖情報を診断・治療支援・医学教育支援へと利用可能とする方法を実現する。
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次年度使用額が生じた理由 |
平成30年度はマイクロCT画像データベースを格納する大容量ディスク装置(Supremacy RAID)を導入する予定であった。しかし、終了した研究課題で使用していたワークステーション及び大容量ディスク装置を流用することで、これまでの画像処理研究及びデータベース構築は問題なく実施することができた。ワークステーション及び大容量ディスク装置の購入予定金額が未使用となり次年度使用額が生じた。次年度は、画像の増加によりマイクロCT画像データベースを格納するディスク装置の必要容量増加が見込まれる。そのため次年度使用額を用いて大容量ディスク装置(Supremacy RAID)を購入する。これにより、3次元マイクロ画像データベースの構築をさらに推進する。
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