研究課題
細胞機能が核内DNAの分布の違いに影響されることが認識され始めている.例えば,血管壁内の平滑筋細胞では高濃度のDNAが核膜付近に集中しており,増殖は殆どしない.一方,この細胞を組織から単離して数週間培養すると増殖が盛んになるが,この際はDNAが核内に緩やかに満遍なく拡がっている.後者では,DNAの2重ラセンが緩みやすいためmRNAの合成が生じやすく,結果としてタンパクの合成,更には増殖が活発になるのではないかと考えられている.一方,我々は,核内DNA分布が核の変形で容易に変化することを見出した.そこで本研究では,細胞核を定量的に変形させた際の核内DNA分布の変化を調べ,これと細胞機能の変化との関係を調べることを目的として2年に亙る研究を進めている.初年度は,個々の骨芽細胞様細胞MC3T3-E1の核に球状に加工したマイクロピペットの先端で圧縮刺激を加える実験系を開発し,核を圧縮したところ3分後に核内のクロマチン凝集体の数が減少することが分かった,今年度はこの現象を生じる圧縮量の閾値を調べるため,押込量を0から5μmの範囲で変化させてクロマチン凝集体の数の変化を調べた.その結果,3μmの押込までは凝集体の数に変化がなかったが,5μmでは3分後に有意に減少することが分かった.しかし,この場合も凝集体の数の現象が見られたのは押込の中心部だけであった.圧子先端の球の曲率から考えて押込の中心部と周辺部の押込量の差はたかだか0.5μmであり,圧縮量の僅かの差が凝集体数の減少に利くことが分かった.また,一度に多数の細胞核を圧縮するため,微細加工で一辺100μm,深さ10μmの正方形のウェルが多数並んだPDMS製基板を作製し,このウェルにひとつづつ細胞を落とし込み,上からカバーグラスを押し付ける系の試作を試みたが,細胞を一様に圧縮することが困難で,この方法は不適切であることが判明した.
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すべて 国際共同研究 (1件) 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 1件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (4件) 備考 (1件)
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