研究課題/領域番号 |
17K20103
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
光永 佳奈枝 京都大学, iPS細胞研究所, 特定拠点助教 (10398240)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2022-03-31
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キーワード | 共存培養 / GFPラベリング / フリーアミン / FACS / HM / BTK / 分散処理 |
研究実績の概要 |
この研究では、筋ジストロフィー症などの全身性難病の治癒を目標とし、再生医療において夢の技術とされる治療細胞を全身に運ぶ運び屋(ベクター)を作成する。現在の移植技術では、針やシートなどを使って局所的な移植をする他は無く、全身性疾患の治癒を目的とした細部移植は困難となる。 筋肉への遊走性が高く、筋組織に寄与し、構造的に細胞を包接しうるミクソゾア類に着目し、その細胞効率のよい単離と培養系の開発を行なった。 ミクソゾア類が寄生しうる、市販の刺身を宿主材料とし、HM:ヒラメ、マグロ(Flounder, Tuna:HM)、BTK:鰤、鯛、鰹(yellow tail, sea bream and bonito:BTK)は1~3mm厚に薄切し、直接、培養細胞上に重層した。数日間の共存培養をおこなったのちに目的の細胞体を採取した。下層の細胞にはStableなcell lineにGFPの蛍光ベクターを導入しラベリングをした細胞、またはGFPマウスから初代培養を行なった各種組織の細胞を用いた。共存培養を行なった後、シャーレ内の細胞を剥離処理を施し、アミン反応性色素(生死選別試薬)を用いて染色を行ない、FACSにて解析とSortingを行なった。その結果、これまでに行なってきた細胞体単離の手法及び、1日以上かけて、直接、宿主組織から細胞体を分散する剥離処理時間を短縮することが可能となった。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
共存培養をする際に、コンタミネーションを起こし、その除去と清掃に時間を要した。市販の刺身を用いているため、除菌は十分にできない。そのためあらかじめ丸ごと表面殺菌を行ない、それを無菌状況下で処理を行なった。無菌処理がうまくいくときと行かないときがあり、処理方法や処理時間の検討に33回ほどの実験を行なった。数回はその後の実験に使える培養を行えたが、実際には生きた細胞体を取得できたのは1回だけである。あわせて、下層に用いる初代培養する条件検討にも時間を要したため、当初の計画より大幅に遅れている
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今後の研究の推進方策 |
今回の実験においては、33回の共存培養実験を行なった結果、1回だけの成功事例となった。そのため、下層に用いる細胞種の選別とミクソゾア類が効率的に取得できる条件を検討し、安定的に刺身のミクソゾア類が取得、単離できる条件を見つけ出すことが必要となる。下層に用いる細胞種を様々に使用、検討することは、予定している遊走実験にも応用ができるため、上記の検討を重点的に進めていく。研究の全体構想の内、可能であれば取得できた細胞体のゲノム解析を行なえるところまで終了させる計画である
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次年度使用額が生じた理由 |
今年度の計画は、培養を利用して、目的の細胞体を得る予定であったが、業務の多忙と初代培養のコンタミネーションにより、培養を失敗する回数が増えてしまった。滅菌システムを手配借用し、設備や実験器具などのクリーニングを行ない、引き続き研究を遂行している。次年度には、開発中の共存培養方法を安定化させるために、細胞体が死滅しない程度に刺身の表面消毒の条件を細かく定め、下層に用いる細胞種の選定とこの培養系からの細胞体取得の成功率をあげる予定である。その実験のために必要なStable cell lineの複数購入と培養液、剥離剤、アミン試薬を中心に使用する計画である。
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