研究課題/領域番号 |
17K20104
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研究機関 | 京都大学 |
研究代表者 |
笈田 武範 京都大学, 工学研究科, 助教 (70447910)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 超低磁場MRI / 圧縮センシング / T1コントラスト改善 / 磁束密度計測 |
研究実績の概要 |
本研究課題では,超低磁場MRI(ULF-MRI)を生体応用する場合に課題となるMRI計測時間の延長を抑制した高速撮像法の実現,および新たな画像コントラストの創出として3次元磁束密度計測シーケンスの開発を行っている. 本年度は,上記の課題に対して,圧縮センシングを用いた高速撮像およびT1コントラストの向上に関して検討を行った.この検討の中で0.3Tの低磁場MRIを用いて実験を行い,圧縮センシングを用いてMR信号の読み出しにおけるサンプル数の削減により,TRの短縮を可能とすることが確認できた.実際には,サンプル数をフルサンプルの25%に削減したシーケンスに対して,周波数エンコードの巻き戻しパルスと位相エンコードパルスをランダムに設定してMR信号収集を行うことによってTRの短縮を実現した.その結果,本手法が撮像の高速化およびT1コントラストの向上に有益であることが確認できたので,その有効性を公表した.しかしながら,サンプリングの打ち切りに伴うアーチファクトの抑制が不十分であり,精度の高い画像取得のためにはサンプル数やサンプリングパターンの選択,再構成アルゴリズムに関してさらなる検討が必要であることも確認できた. また,新しいコントラストの創出として磁束密度計測シーケンスについて検討を行う過程で,スピンロック撮像法と呼ばれる振動磁場計測法に関する検討を行った.スピンロック撮像法は,生成した横磁化の低周波数領域での2次共鳴を利用して振動磁場を計測する.そのため,数十Hz以上の周波数に対しては,nT未満の磁場を計測できる可能性が示されたが,スピンロック撮像法では,振動磁場の初期位相によって結果が変化するという課題があることが確認できた.ULF-MRIにおいては一様磁場を変化させることにより,数十Hz未満の磁束密度の計測や初期位相の課題への対応が必要であることが確認された.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成29年度に予定していた圧縮センシングを用いた読み出し時間の短縮および1次元磁束密度計測シーケンスの開発のうち,圧縮センシングを用いた読み出し時間の短縮に関しては,その有効性を確認し,公表も行った.また,1次元磁束密度計測シーケンスの開発に関しては,現存のスピンロック撮像法に関する比較検討を進めるとともに,実装環境の準備を進めてきた.実装環境については,本年度購入したPXIシステムを用いたパルスシーケンスコントローラの実装を行い,1 MHzの更新レートでの磁場のコントロールが可能なシステムを構築した.この結果,渦電流発生の課題など実際にシーケンスを実装する上での課題には未着手であり,平成30年度にはこの課題への対応を行うとともにマルチエコーシーケンスを実装する必要があるが,平成30年度実施予定のEPIを含むマルチエコーシーケンスの実現にも寄与する環境の構築ができた. 以上より,おおむね順調に進展していると判断した.
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度は,予定していたecho planar imaging(EPI)を含むマルチエコーシーケンスの実現および対象外磁場抑制の必要性の検討に着手する.平成29年度に構築したパルスシーケンスコントローラおよびそれに合わせて設計されたブロッホ方程式の数値解析ソルバを使用して,マルチエコーシーケンスおよび残存磁場の影響に関するシミュレーションおよび実測を行う. まず,EPIおよびsteady state free precession(SSFP)を用いた超偏極Xeの実測を目指した実装を優先して行う.これにより画像化部分の高速化が実現できるので,磁束密度計測シーケンスのプレパレーションパルス部分と合わせることによって,磁束密度計測の高速化が実現可能になる.これにより,最終年度に実施予定の3次元磁束密度計測シーケンスの実現に向けた準備を推進する. さらに,磁束密度計測シーケンスにおける対象外磁場抑制に関しては,地磁気や商用電源電流に伴う50/60 Hzの磁場が超低磁場MRIを用いた磁束密度計測に対してどのような影響を及ぼすのかに関して検討を進める.また,検討の結果磁場抑制が必要な場合には,補償コイルやPID制御などを用いた磁場抑制の実装に着手し,磁束密度計測の精度向上を促進する.
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