研究実績の概要 |
我々のからだは常に外界から物理的刺激を受け適切に反応している.この過程を生物学的に解明するメカノバイオロジーの理論に基づいた病態解明・治療法を探索するメカノメディスンは現在脚光を浴びている.しかしながら、主要な機械刺激である静水圧は重要であるにもかかわらず研究の進捗が遅れている.静水圧刺激を細胞・組織に適切に負荷し、そのメカノトランスダクションを解析する技術が十分に開発されていないからであろう.そこで申請者は静水圧負荷・解析システムの最適化を行うことにより,細胞内情報伝達機構の解明、更には再生医療・不妊治療への応用を目指した. 昨年度構築したシステムを用いて、歯根膜細胞の細胞動態計測並びに細胞骨格、細胞核の観察を実施した. 20 MPa以上, 5 minの静水圧条件下において、歯根膜根膜細胞の収縮は短軸のみの収縮が観察され、細胞内の細胞骨格の方向性に依存すると推察された.また、細胞の核の面積変化について解析を実施した結果,大気圧下での細胞と比較し, 20 MPa, 5 minの刺激下では面積変化は観察されなかったが, 40 MPa 以上, 5 minの静水圧刺激下では核の面積が約70%まで減少した。さらに核の面積変化が観察された条件での遺伝子の網羅的解析の結果,miRNA発現量に統計的に有意な差はなかった.これらの結果は,咬合圧による,歯根膜細胞への動態的および機能的影響の解明に繋がる.
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