研究課題/領域番号 |
17K20113
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研究機関 | 青山学院大学 |
研究代表者 |
三井 敏之 青山学院大学, 理工学部, 教授 (40406814)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2021-03-31
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キーワード | 心臓 / 心筋細胞 / 自律拍動 / メカノバイオロジー |
研究実績の概要 |
リアルタイム画像プロセッシングによる力学的probe刺激を長時間にわかり、培養環境下で心筋+繊維芽細胞の自律拍動を行う細胞の集合体に与えることに成功した。画像処理にはナショナルインストルメント社のlabviewをプラットフォームにして、連続する画像の差分やモーションキャプチャーから、自律拍動による細胞集合体の振幅や向きを検出して、そして、この情報から、PZTによるtungsten probeの刺激モーションパラメータを決定した。リアルタイムで、細胞の集合体の自律拍動に応じた刺激モーション、つまり、細胞の集合体と一体化した、刺激のプラットフォームが完成したと言える。この装置をもちいて、細胞の集合体の拍動の抑制、強制拍動、拍動の増強等を制御を試みる実験を行った。
リアルタイムの刺激制御がない状態で、典型的な自律拍動(拍動間隔0.3~1.0 sec)を行う細胞の集合体に周期的なprobe刺激を与えた場合、自律拍動の変化は、自律拍動の拍動間隔、刺激の周期、また、自律拍動と刺激の位相差に依存した。そこで、検証すべくパラメータを位相に制限して、リアルタイムの制御制御による、自律拍動の変化を調べた。先駆的な結果としては、刺激の位相差が-π/4~0の場合(自律拍動が起こる直前に刺激)には拍動が停止して、+π/2の場合、刺激の影響を受けないか、拍動間隔が長くなった。一方で、-π/2の場合、拍動間隔が短くなり、刺激がtrigger として機能した可能性がある。今後は、刺激の振幅等や個体差による不確定さをカバーする必要がある。また、ソフトマテリアルの表面上での培養も試み、その表面のコートに使用するコラーゲンの強度測定をAFMにより測定した。標準的なコラーゲンから、特殊なコラーゲンまで調べた。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
リアルタイム画像プロセッシングによる力学的probe刺激を長時間にわかり、培養環境下で心筋+繊維芽細胞の自律拍動を行う細胞の集合体に与えることに成功した。画像処理にはナショナルインストルメント社のlabviewをプラットフォームにして、連続する画像の差分やモーションキャプチャーから、自律拍動による細胞集合体の振幅や向きを検出して、そして、この情報から、PZTによるtungsten probeの刺激モーションパラメータを決定した。リアルタイムで、細胞の集合体の自律拍動に応じた刺激モーション、つまり、細胞の集合体と一体化した、刺激のプラットフォームが完成したと言える。この装置をもちいて、細胞の集合体の拍動の抑制、強制拍動、拍動の増強等を制御を試みる実験を行った。
リアルタイムの刺激制御がない状態で、典型的な自律拍動(拍動間隔0.3から1.0 sec)を行う細胞の集合体に周期的なprobe刺激を与えた場合、自律拍動の変化は、自律拍動の拍動間隔、刺激の周期、また、自律拍動と刺激の位相差に依存した。そこで、検証すべくパラメータを位相だけと決定し、リアルタイムの位相制御による自律拍動の変化を調べた。先駆的な結果としては、刺激の位相差が-π/4~0の場合(自律拍動が起こる直前に刺激)には拍動が停止して、+π/2の場合、刺激の影響を受けないか、拍動間隔が長くなった。一方で、-π/2の場合、拍動間隔が短くなり、刺激がtrigger として機能した可能性がある。今後は、刺激の振幅等や個体差による不確定さをカバーする必要がある。
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今後の研究の推進方策 |
リアルタイムのフィードバック制御では、強振しないための適度な“フィルター”の機構が必要になる。自律拍動として、レファランスにする拍動自体が刺激に大きく影響を受けるので、そのフィルター機構を確立するのに時間を要した。本課題では、一時的に細胞の集合体の拍動が不安定になり、細動を起こすと、それに応じた刺激の周期も細動に同期して、自律拍動は完全に停止してしまった。そこで、刺激を無効にする条件(フィルター)を課して、最終的には連続する5回の自律拍動から、拍動の安定性を評価して、それから、刺激を与えることとした。これにより、安定した自律拍動に、位相の異なる刺激を与えることに成功した。リアルタイム制御のスペックとしては、検出から刺激までの時差は、< 0.10秒程度まで短縮した。拍動間隔が0.30秒なので、この時差の短縮は必要である。上述した5回の自律拍動の検出後の刺激では、実質、この時差の影響はないが、高速度カメラ+USB3.0のインターフェイスとlabview以外のプラットフォームによる装置のアップグレードを行う予定である。リアルタイム制御が安定するには自律拍動の振幅が画像の1ピクセルの大きさの数倍は必要である。そこで、当初の計画にはないが、この振幅を増大するために培養のsubstrateをシャーレからソフトマテリアル(PDMS+コラーゲンコート)に変更した。この系では細胞の集合体をパターン化できて、細胞数と形状を画一化した状態で刺激の実験を行えるようになった。また、ソフトマテリアル上では、硬いシャーレ状で増殖する繊維芽細胞が分化したmyofibroblastを低減できて、以前より長期的な集合体の観測が可能になった。一方で、この刺激装置開発のモデルサンプル観測してきた心臓組織片のペアリングによる同期化については、部位依存の結果が有意に表れて、一つの研究課題として完結した。
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次年度使用額が生じた理由 |
新型コロナウイルスに関する自粛の影響で、論文投稿に遅れが生じて、英文校正、掲載費等の使用額を2020年度に繰り越す申請を行った。
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