研究課題/領域番号 |
17K20116
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研究機関 | 東京工業大学 |
研究代表者 |
藤枝 俊宣 東京工業大学, 生命理工学院, 講師 (70538735)
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研究分担者 |
太田 宏之 防衛医科大学校(医学教育部医学科進学課程及び専門課程、動物実験施設、共同利用研究施設、病院並びに防衛, 生理学, 助教 (20535190)
丸山 剛 早稲田大学, 高等研究所, 講師(任期付) (30613872)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2020-03-31
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キーワード | 高分子ナノ薄膜 / 自己展開 / 含フッ素高分子 / インクジェット印刷 / ナノインク / グラフェン / アンテナコイル / 無線給電 |
研究実績の概要 |
先進医療や医科学研究の高度化に向けて、患者や実験動物に対して低侵襲に使用可能な医療機器を開発することは、Quality of lifeやデータ精度の向上を図るうえで重要である。本研究では、宇宙構造物の自己展開性と給電システムをヒントにして、注射針にて注入後に生体内で展開・作動可能なナノ薄膜状アンテナを開発し、生体外から電気的に制御可能な遠隔操作システムを開発する。平成30年度の成果は以下のとおりである。 (1) 薄膜状アンテナコイルを利用した発光デバイスの作製 層状物質であるグラフェンフレークに着目し、ガラス基板上にインクジェット印刷したグラフェンインクと金ナノインクからなるアンテナコイルを高分子支持膜法にて剥離することで、薄膜状アンテナコイル(総膜厚: 約1 um)を作製した。薄膜状アンテナコイルに、青色チップLEDを搭載し、ジャンパー配線が印刷されたナノシートにて封止することで発光デバイスを作製し、無線給電(20 Vp-p, 30 MHz, 2倍増幅、給電距離10 mm)にて青色LEDを点灯させた。発光デバイスは非常に薄く柔軟であるため、ブタ小腸の内腔に粘着剤なしで貼付可能であり、丸めた状態(曲率半径:5 mm)でも点灯することが示された。これにより、生体組織に密着しながら、無線にて外部から電力を供給するための基盤技術を確立した。 (2)自己展開可能なナノ薄膜の設計 水中にてナノ薄膜の自己展開を誘起するためにナノ薄膜の表裏面を疎水化した。具体的には、薄膜状アンテナコイルの辺縁部のみをフッ素高分子にて修飾することで、シリンダー(直径6.6 mm)から水中へ射出した後、2秒以内に自己展開させることを示した。これにより、内視鏡などの細い管腔構造を通じて、生体内へ低侵襲に適用できるデバイスとしての応用が期待される。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
平成30年度に計画していたナノ薄膜状アンテナを用いた発光デバイスの作製は概ね達成された。現在は得られたデバイスの給電距離を延ばすためにコイルの形状およびデバイスの作製条件の最適化を進めている。さらに、平成31年度で予定している生体環境でのデバイスの作動を実現するための絶縁膜の検討を始めた。
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今後の研究の推進方策 |
平成30年度の研究成果を基にして、薄膜型発光デバイスを封止するための絶縁膜の検討を進める。また、実際に生体へ適用することを想定し、生体内への内視鏡を用いた注入に適したデバイスの設計や挿入方法についても精査する。
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次年度使用額が生じた理由 |
研究計画の途中で所属機関の異動があったために、海外出張旅費を次年度に繰り越すことにした。
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