研究課題/領域番号 |
17K20121
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研究機関 | 東京医科大学 |
研究代表者 |
水島 良太 東京医科大学, 医学部, 助教 (10749138)
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研究期間 (年度) |
2017-06-30 – 2019-03-31
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キーワード | 超音波エコーイメージング / 造影剤 / ガスベシクル / バイオテクノロジー / ナノ粒子 |
研究実績の概要 |
ほ乳類個体において「遺伝子コード可能な超音波エコー造影剤」を実現するため、光合成細菌planktothrix rubescenes/agardhii 由来のヒト化したガスベシクル(GV)遺伝子をほ乳類細胞に導入し、ほ乳類細胞でGV発現について検証した。その結果GV遺伝子gvpA, gvpC16, gvpC20, gvpC28を組み合わせて導入することで、ヒト乳がん由来細胞株KPL-4において、形や大きさの分布の異なるGVが形成されることを、透過型電子顕微鏡や動的光散乱法によって証明した。以下で、これらのGV発現細胞およびガスベシクルを、導入した遺伝子の種類によりGV_AC20、GV_AC16C20などと呼ぶ。次にこれらのGVを発現した細胞サンプルに超音波を照射した時に散乱される超音波の強度を測定することで、細胞内で発現して、機能する超音波エコー造影剤としての有用性を検証した。その結果5MHzのトランスミット周波数では、GV_AC20を除く全てのGV導入細胞で、コントロールの細胞と比較して、2倍以上の散乱強度の増加を観測できた。特に、GV_AC16C20は比較的均一な大きさの分布を持ち、100nm以下と、GVとしては小さいが、超音波の散乱強度の顕著な増加を観測できた。この結果は、世界に先駆けて、ほ乳類細胞内で機能する遺伝子コードされた超音波エコー造影剤の概念を細胞レベルで実証するものであり、画期的な成果である。GVは、既存のマイクロバブルやナノバブルといった安定化気泡による超音波エコー造影剤と比較して、生体内での安定性が高く、ナノサイズで、腫瘍血管孔を透過可能であるので、腫瘍造影のための次世代超音波エコー造影剤としても期待されているが、GV_AC16C20はその有力な候補であると考えられる。これらの研究成果について理化学研究所が国際特許(PCT)出願中である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
2: おおむね順調に進展している
理由
導入するヒト化ガスベシクル遺伝子の組み合わせを変えることで、ほ乳類細胞で発現するガスベシクルの大きさや形を制御するというアイデアを実証することに成功し、さらにその超音波エコー造影剤としての有用性を細胞レベルで実証することができた。また、これらの成果について特許出願も行っている。この点で、当初の想定通りに研究はおおむね順調に伸展していると言える。しかし、マウス個体にガスベシクル発現KPL-4乳がん細胞を移植した担癌マウスを用いた、ガスベシクルの造影効果の検証実験が、当初予定していた実験施設において、遺伝子組み換え動物の実験申請が困難なことにより、頓挫してしまった。現在、このガスベシクルの超音波エコー造影効果をマウス個体において検証する実験を実施可能な施設及び共同研究者を探しているところである。
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今後の研究の推進方策 |
GVを発現するKPL-4乳がん細胞株を移植した担癌マウスモデルを用いて、マウス個体でGVの造影効果をさらに検証する必要がある。また、CHO細胞などの浮遊細胞株でGV安定発現株を作成し、GVを大量に生産できる細胞を作成することを計画している。この細胞を用いて、gvpCのC末端にさまざまなペプチド配列を付加することで、特定の生体分子を標的可能なGV造影剤を生産できる系を確立することを目指す。また、GVが細胞内で発現してからどの程度の時間で細胞内で分解され消化されるかや、細胞生理への影響など、GFPと同様に、遺伝子コードされた造影剤としての基本的な性質について研究することも必要であると思われる。
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次年度使用額が生じた理由 |
超音波エコー測定を外部の業者に外注して行うことを計画していたが、遺伝子組み換え動物の実験申請が、予定していた実験施設において困難であるということで、実施できなかった。今後、共同研究者などを探すことで、ガスベシクルのマウス個体における造影効果について検証する実験に使用することを計画している。
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