核医学セラノスティックスの実現には、標的組織に治療十分量の放射性核種(RI)を集積させ、かつ正常組織への集積を極力低減することが重要である。従来の核医学プローブでは一般的に標的指向性化合物とRIは一体化しており、投与後の体内動態はその化合物の性質に依存する。標的部位にも集積するが、正常組織である腎臓や肝臓への集積も高いことが多く、またある程度の分子量を持つものは血中滞留時間も長い。本研究ではプローブにRIの体内動態制御の複数システムを組み込むことで、多段階でRIの体内動態を能動的に制御することを目指した。 本年度は、昨年度に引き続き、薬物担体のリポソームにRIを種々の配位子との錯体として封入し、第一段階でリポソームの腫瘍集積性を利用して腫瘍にRIを集積させ、次段階でRI-配位子錯体の性質で正常組織からのクリアランスを向上させることを検討した。また実際の核医学治療を視野に入れ、治療に十分量の64/67Cuのリポソーム封入法についても検討を加えた。リモートローディング封入条件を検討した結果、リポソーム内部にDOTA、TETA、NOTAおよびECを含むリポソームに対して、40℃30分のインキュベーションで、いずれも90%以上の封入が可能となり、治療にも適用可能と考えられた。担がんマウスを用いた体内分布検討では、腫瘍集積はいずれの64Cuリポソームでも5-10%投与量/gと良好であった。一方、投与24時間後の肝臓集積は64Cu-ECリポソーム投与群で他より有意に低い結果を得た。肝臓でリポソームが壊されたのちに、放出された64Cu-ECが迅速にクリアランスされた結果と推定している。これらの結果から、本システムは目的とする腫瘍への十分量の集積と正常組織集積低減の両立を可能とし、核医学セラノスティックス実現が期待できると考える。
|