研究課題
本研究では,脳の情報処理過程における学習・記憶,超並列,自律分散といった様々な原理に基づく柔軟かつ複雑な処理をハードウェアアルゴリズムとして実装することにより,高次の処理を極めてコンパクトなシステム構成で実現することを目指す.特に本研究においては,脳の可塑性(環境適応性)と呼ばれる機能にヒントを得,従来の延長上にない知的環境適応型新概念LSI設計技術の確立を到達目標とする.本技術の実現においては,入力情報を適切に処理する計算アルゴリズムのみならず,本アルゴリズムを如何にしてコンパクトかつ低消費電力なハードウェアとして実装するかが重要な課題となる.そこで,本年度は,昨年度に行ったトロント大における海外共同研究によって得た知見に基づき,知的環境適応処理をコンパクトにハードウェア実装し,かつ省エネルギーで動作させることを可能にするための回路技術について研究を推進した.情報の量子化技術および不揮発回路技術を用いることにより,従来のCMOSを用いた回路構成と比較して高いエネルギー効率を有する脳型計算向けハードウェアの実現を可能にする要素回路を設計し,回路シミュレーションによる性能評価を通して,その有効性とさらなる高性能化に向けた課題を明らかにした.さらに,環境変動や素子特性の変化によって生じる性能ばらつきを抑制するための回路技術についても並行して研究を推進し,具体的応用事例におけるその有効性を評価した.
2: おおむね順調に進展している
渡航中に進めた研究成果を更に発展させた内容について,複数の国内・国際学会および学術論文誌で発表を行ったとともに,今後の発展性についても方向性が明らかになりつつあり,本研究の進捗は概ね順調に進展していると判断できる.
海外共同研究によって得られた知見を元に,受入研究者とのWebミーティング等を通した情報交換も継続しつつ,その研究成果を取りまとめ,国際学会および学術論文への発表を継続する.
すべて 2020 2019
すべて 雑誌論文 (1件) (うち査読あり 1件) 学会発表 (8件) (うち国際学会 6件、 招待講演 1件)
IEEE Journal of Solid State Circuits
巻: 54 ページ: 2991-3004
10.1109/JSSC.2019.2930910