本研究の目的は、自然光下において安定的にヒトの状態を反映する瞳孔成分抽出を行うことを目指す。この技術の実現のためには、視覚刺激の精度の高い物理パラメータのコントロールと、「明るさ」に対する瞳孔変化の高度な知見が必要となる。そのために、「明るさ、まぶしさ」に関する瞳孔研究に造詣の深い国際共同研究先とともにスピーディーに技術開発を進めていく。
最終年度である2020年度は、前年度セットアップを行った実験環境で、トップダウン処理が空間位置に応じて明るさ知覚に関係しているかどうかを明らかにするために、VR空間での瞳孔測定実験を行った。姿勢を変えて行った2つの実験の結果から、認知的な要因が明るさ知覚の空間的位置に影響を与えている可能性を示した。また共同で進めてきた知覚闘争における認知状態がどのように瞳孔径に反映されているかの研究について論文誌への投稿を行い発表した。具体的には、知覚的に曖昧で二重性のある物体(ネッカーキューブ)は、注意を喚起することで、物体の下から見る視点よりも上から見る視点(VFA)を想定するように、より効果的にバイアスをかけることができるという仮説を立てた。その結果、バイアスの存在が確認され、下から見た場合と比較して、瞳孔径の減少で示されるように、注意力の低下を伴うことがわかった。
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