徒歩移動をカバーできるような小型の乗り物(パーソナルモビリティビークル,以下PMV)の実現は,移動に不自由がある人(足の不自由な障害者,高齢者など)のQOLも向上する.そのようなPMVに求められるのは,徒歩移動圏に存在する段差や傾斜などへの対応と,移動の大半を占める舗装路面上でのエネルギ効率と高速性能の高さである.本研究課題では,このようなPMVの安全性をより高めるための基盤的な要素技術の開発を目指し,研究期間を通じて,次の課題に取り組んだ. ①最先端技術の調査:生体信号情報をPMVに融合したシステムにできるかを調査,検討するために,最先端レベルの知見が集積しているETH ZurichのSensory-Motor Systems Lab.に赴き在外研究を行った.コロナ禍のため取り組める内容の制限はあったものの,2020年3月~2021年3月のほぼ予定通りの1年間,在外研究を実施した. ②PMV自体の移動性能の向上:移動エネルギ効率と高速性の可能性が高い4車輪型の移動体を前提にしつつも,連続的な階段段差にも対応できる移動アルゴリズムを提案,実証した. ③研究開発した技術の検証:コロナ禍で国際大会への参加はハードルが高かったが,車いすユーザが競技者(操縦者)となり,開発したPMVで国際競技会であるCybathlon 2020に出場し,移動性能を実証した(4位). ④安全性向上のための要素技術開発:生体信号情報を活用した安全性向上に対する現時点での実現の難しさもあり,多機能なPMVに特有な機能のためのヒューマンマシンインターフェース技術,PMVの知能化(自動運転化)による操縦補助技術,あるいは車いす搭乗者の計測システムの基礎的技術などの面から安全性向上に取り組んだ.
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