本研究課題では活性汚泥中のコウレオスリックス属細菌を題材に、バクテリオファージ(以下ファージ)を用いた特定細菌の選択的制御を目的とした。また同方法を医療分野において問題となる各種細菌の選択的制御に応用することも目的とした。 1)都市下水処理施設の糸状性細菌を宿主とする溶菌性ファージの探索:都市下水処理施設より新たに採取した試料より2種類のファージ混合液を調整した。活性汚泥から分離培養された糸状性細菌(9株)に同ファージ混合液を添加し、細菌とファージの共培養を行った。その結果、寒天培地での培養において、1株の細菌に感染するファージを分離できた。現在ファージのDNAについて解析を進めている。 2)歯周病の原因となる細菌を宿主とする溶菌性のファージの探索:下水処理施設より新たに採取した試料より37種類のファージ混合液を調整した。同ファージ混合液を口腔から分離培養された細菌(3株)に添加し、細菌とファージの共培養を行った。しかしいずれの混合液を用いた実験においても、ファージが細菌に感染して溶菌したことを示すプラークを確認することはできなかった。対象とする歯周病原因細菌を変え、新たな試料よりファージ混合液を調整して実施したものの、残念ながらファージを得ることはできなかった。 3)大腸菌を宿主とする溶菌性のファージの探索と解析:昨年度に調整した7種類のファージ混合液を糞便より分離培養された大腸菌株に添加し、細菌とファージの共培養を行った。その結果ファージ3株を分離することができた。DNA解析の結果、そのうちの2株は昨年度に分離したKuravirus属に近縁なYF01株と高い類似性を有していることが分かった。Kuravirus属のファージには、病原性大腸菌に対する分解活性を有するものも報告されているため、今回分離したファージについても病原性大腸菌への活性を確認する予定である。
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