自然要因による気候変動が人類の文明活動にどのような影響を与えてきたのかを理解するためには長期の気候データが重要である。また、そのような気候データは、気候変動のメカニズムを理解するためにも必要である。しかし、精確な年代をもつ長期間の気候変動データは日本周辺には少ない。本課題では、人類の文明活動と関連が強い完新世における沖縄地域の気候変動を高時間分解能で明らかにすることを目的として、沖縄本島および周辺離島で得た完新世をカバーする石筍試料を用いて研究を行う。特に、高解像度の年代モデルを構築するために、国際共同研究を通じて多くのウラン・トリウム年代測定を実施することで高解像度の気候変動を明らかにすることを主な目的としている。また、本研究を通して、今後の国際的連携推進の基盤となるネットワークを構築する。 本研究では、精確な気候変動データを得るために年代軸(X軸)と気温や降水量等の気候指標(Y軸) の両方の分析を並行して進める。今年度は、年代軸はウラン・トリウム(U-Th)法による放射性同位体分析を国立台湾大学で実施した。現在から過去2千年間程度をカバーする石筍は沖縄ではこれまで1試料しかなかったが、スクリーニング測定によってさらに1試料の石筍が過去2千年を含んでいることがわかった。また、これらの試料のY軸に相当する気温などの指標として安定同位体比分析を実施した。また、沖縄で開催された日本地球化学会年会において共同研究先の国立台湾大学の研究者を招いて日本-台湾共同セッションを開催し、国際的な研究者のネットワーク構築に努めた。
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