研究課題
自然要因による気候変動が人類の文明活動にどのような影響を与えてきたのかを理解するためには長期の気候データが重要である。また、そのような気候データは、気候変動のメカニズムを理解するためにも必要である。しかし、精確な年代をもつ長期間の気候変動データは日本周辺には少ない。本課題では、人類の文明活動と関連が強い完新世における沖縄地域の気候変動を高時間分解能で明らかにすることを目的として、沖縄本島および周辺離島で得た完新世をカバーする石筍試料を用いて研究を行う。特に、高解像度の年代モデルを構築するために、国際共同研究を通じて多くのウラン・トリウム年代測定を実施することで高解像度の気候変動を明らかにすることを主な目的としている。また、本研究を通して、今後の国際的連携推進の基盤となるネットワークを構築する。本研究では、精確な長期間の気候変動データを得るために年代軸(X軸)と気温や降水量等の気候指標(Y軸) の両方の分析を並行して進める。今年度は、ウラン・トリウム年代測定を国立台湾大学および南洋理工大学(シンガポール)に滞在して実施した。特に、昨年度にスクリーニングで発見した過去2千年を含む試料について重点的に分析を進めた。また、新しい試料のスクリーニング分析も行った。これらの試料の気温等の指標として石筍の安定同位体比分析を実施した。また、シンガポール滞在時に開催された国際会議で研究成果の報告を行った。
3: やや遅れている
南陽理工大(シンガポール)・台湾大学でのウラン・トリウム年代測定の実施などはおおむね計画通りに進捗した。しかし、分析装置の故障と修理、移設作業等で同位体比分析は当初計画よりも時間を要した。年度後半の出張計画も遅れた。
必要なデータはそろいつつあるので、データ解析に重点を移しながら国際共同研究として進める。昨年度末から深刻化した新型コロナウィルスの対策による入国・出国制限があり、今年度の訪問計画は流動的である。分析と解析の方針はすでに合意済みであり、試料はそれぞれの機関に輸送済みなので、訪問できなくても共同研究に必要なU-Th分析の実施は可能ではある。
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Climate of the Past
巻: 16 ページ: 17~27
https://doi.org/10.5194/cp-16-17-2020