研究課題
本事業の目的は、沿岸湿地再生と気候変動による海面上昇や洪水減災の複合目的を持つ生態系インフラストラクチャー事業で世界をリードする英国において実施されている内陸への防潮堤移動建設の事業者及び住民間のリスク受容と合意形成の過程を解明することである。沿岸環境開発・再生に関する住民の意思決定参画過程の鍵となる要素を、英国で行われた55全事業の文献調査と聞き取り、及び3つのケーススタディーを通じ明らかにする。当初の申請書では、5つのケーススタディーであったが、予算が申請よりも少なくなったこと、また、数を少なくすることによって、各ケースをより深くみることができるとの判断から、現在、特に3つのサイトに焦点をあてて資料収集をしている。本事業では、日本の国交省と環境省が合わさった業務を行う「環境食料省・環境局(DEFRA/EA)に常勤している「コミュニケーション・オフィサー」にも注目し、その合意形成手法についても調整を行っている。2021年度は、環境食料省・環境局から「塩生湿地再生ハンドブック」を共著する機会を頂き、無事にそのハンドブックにおける一章を、研究協力者や新しい方々と完成させることができた。ケンブリッジ大学にて毎週行われていた研究チーム会議と、セミナーには、できるだけ毎週参加できるように調整を行った。また、沿岸湿地再生に関わる関係者を対象とした質問票調査の2回目を無事に行うことができた。今後、早期にデータの集計を行い、研究全体の形をつくっていきたい。
3: やや遅れている
引き続き、コロナウイルス感染が全土に広がっていたことより、自由に英国にいって調査をすることがかなわなかった。また、イギリスに行けた時も大学での活動や出勤が制限されていたりすることも多く、自由な研究環境が整わない状況であった。オンライン会議のおかげで、共同研究者とは繋がっていることはできた。イギリスの研究者も移動をしてはいけない政策下での調査や研究活動に大きな戸惑いを見せている様子であり、情報収集のスピードも緩やかにならざるを得なかった。日本にて英国メディア分析(地方・州・全英メディアにおける事業報告を可能な限り全て閲覧、意見衝突・合意事例や要素の下調べ)を行った。少しずつデータは集まってはいるものの、当初計画していたスピードよりも遅い進捗状況となっている。
今後は、資料と同時に、以下の点を進める。1)英国において住民との意見衝突により一時、又は完全停止となった沿岸湿地再生・減災事業と、実施された全事業を網羅的に示した地図の作成(文献調査、及び、行政機関・研究所・コンサルタント・NGOからの聞き取り)、同時にリスク受容や合意形成過程の課題についても事業ごとにまとめる。2)3つのケーススタディーサイトを選択し、以下を考察する:2ー①環境リスク・コミュニケーション実践、2ー②合意形成過程に行われた会議内容分析、2ー③政府・NGO担当者及び住民のフォーカスグループ・インタビュー、2ー④簡易質問票調査、3)ケーススタディーで得られた分析を大学、及び研究所セミナーで発表し、内容を精査する。4)執筆・発表活動を精力的に行う。
すべて 2022 2021
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 1件、 査読あり 2件) 学会発表 (5件) (うち国際学会 3件) 図書 (3件)
Journal of Human and Environmental Symbiosis [Kankyo Kyosei]
巻: 38(1) ページ: 109-118
Sage Open
巻: 22(6) ページ: 644-659
10.1177/21582440211023155
Elephant Times
巻: 2 ページ: 26-27