研究課題/領域番号 |
17KK0016
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
谷本 浩志 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 室長 (30342736)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 大気化学 / 海洋有機物 / アセトン / 地球観測 / モデリング |
研究実績の概要 |
揮発性有機化合物(VOC)は大気中における光化学反応の燃料となる重要な成分であり、海洋は放出源または吸収源として、VOCの全球的収支に大きな役割を果たすと考えられている。しかしながら、技術的困難さゆえに観測例が非常に少なく、VOCの収支における海洋の役割は大きな不確実性を伴っている。そのため、極微量濃度を計測できる高い感度を維持しつつ小型な観測技術の開発を行い、研究船に搭載して実海洋環境下における観測を行っているが、ここでは、これまで蓄積してきた海洋観測データおよび今後得られる海洋観測データを、他国の研究者によって得られたデータとも統合することで様々な海域における海洋表層溶存VOC データベースを作成し、それをグローバル大気化学輸送モデルに組み込むことで、VOCの全球収支に及ぼす海洋の役割および環境影響に関する理解を深めることを目的にしている。昨年までに完成した、我々の太平洋における大気中および海洋表層における低分子VOC観測データベースからアセトンを抽出し、欧米の他の研究グループが得て来た同様の海洋観測データとともに、世界最先端であるとともに最も広く使われている全球化学輸送モデルを用いたグローバルなアセトンの収支の理解とモデリングの改良に関する取り組みに提供することで、国際共同研究に貢献した。世界中における海洋観測の濃度データをもとに海洋から大気へのフラックスを算出し、陸域の発生源や、他の揮発性有機化合物からの酸化による二次生成分とともに、気象データを用いて計算されたアセトンの大気中濃度分布を、世界の大洋上で得られて来た大気観測濃度の分布と比較することで、アセトンの大気濃度における海洋の役割は大きいことが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
国際共同研究が進んだが、新型コロナウィルスによる渡航制限のため、現地に滞在して共同で解析をすることができず、進んでいる国際共同研究と相補的な解析や、さらに発展させるための議論が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
他国の研究者によって得られてきた最近のデータとも統合することで、国際的なデータベースとし、アップデートする仕組みを作る議論を始めていく。
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