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2020 年度 実施状況報告書

海洋観測データの統合化と大気化学モデルによる海洋起源有機ガスの全球収支と影響解析

研究課題

研究課題/領域番号 17KK0016
研究機関国立研究開発法人国立環境研究所

研究代表者

谷本 浩志  国立研究開発法人国立環境研究所, 地球環境研究センター, 室長 (30342736)

研究期間 (年度) 2018 – 2021
キーワード大気化学 / 海洋有機物 / 硫化ジメチル / アセトン / 地球観測 / モデリング
研究実績の概要

揮発性有機化合物(VOC)は大気中における光化学反応の燃料となる重要な成分であり、海洋は放出源または吸収源としてVOCの全球収支に大きな役割を果たすと考えられている。しかしながら、技術的困難さゆえに観測例が非常に少なく、不確実性が大きい。そこで、これまで蓄積してきた観測データを他国の研究者によって得られたデータとも統合し、全球収支に及ぼす海洋の役割の理解を深める国際共同研究を推進している。今年度は、大気中で最も濃度が高い含酸素有機化合物であるアセトンと、海洋生物に起源を持つ硫化ジメチル(DMS)について以下のような成果が得られた。
大気海洋間のアセトンのフラックスを双方向で計算できるスキームを持つモデル、海水中濃度を固定値として海洋から大気へのフラックスを計算するモデル、の2種の全球化学輸送モデルを用いてアセトンの収支を評価したところ、海洋は大気のアセトン濃度を非常に強く制御しており、熱帯と亜熱帯の海洋は海洋が大気に対して正味で発生源となっている一方、高緯度の海洋は吸収源となっていることが分かった。また、アセトンの人為起源の排出インベントリデータは北半球で過小評価であること、陸上生物起源のインベントリモデル及びアセトンを二次生成する酸化スキームは過大評価であることが推測された。
サンゴ礁はDMSの大きな発生源であるが、サンゴ礁からのDMSの発生は、これまでの研究から作られた気候学的なデータセットやモデルに明確に含まれているわけではなく、それゆえ、サンゴ礁が局地的または地域的な気候に及ぼす役割は不確実なままであった。そこで、オーストラリアのグレートバリアリーフで行った観測データをもとに、海水中DMS濃度と大気への放出フラックスを計算した結果、グレートバリアリーフ及びそのラグーンから、年間あたり0.03-0.05 TgのDMSが大気中に放出されていることが推定された。

現在までの達成度 (区分)
現在までの達成度 (区分)

3: やや遅れている

理由

国際共同研究が進んだが、新型コロナウィルスによる渡航制限のため、現地に滞在して共同で解析をすることができず、国際共同研究と相補的な解析や、さらに発展させるための議論が遅れている。

今後の研究の推進方策

他国の研究者によって得られてきた最近のデータとも統合することで、国際的なデータベースとし、アップデートする仕組みを作る議論を始めていく。

  • 研究成果

    (4件)

すべて 2021 2020

すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 4件、 オープンアクセス 3件)

  • [雑誌論文] Parameterizing the Impact of Seawater Temperature and Irradiance on Dimethylsulfide (DMS) in the Great Barrier Reef and the Contribution of Coral Reefs to the Global Sulfur Cycle2021

    • 著者名/発表者名
      Jackson R. L.、Gabric A. J.、Matrai P. A.、Woodhouse M. T.、Cropp R.、Jones G. B.、Deschaseaux E. S. M.、Omori Y.、McParland E. L.、Swan H. B.、Tanimoto H.
    • 雑誌名

      Journal of Geophysical Research: Oceans

      巻: 126 ページ: 1-17

    • DOI

      10.1029/2020JC016783

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著
  • [雑誌論文] Temperature and acidity dependence of secondary organic aerosol formation from a-pinene ozonolysis with a compact chamber system2021

    • 著者名/発表者名
      Deng Yange、Inomata Satoshi、Sato Kei、Ramasamy Sathiyamurthi、Morino Yu、Enami Shinichi、Tanimoto Hiroshi
    • 雑誌名

      Atmospheric Chemistry and Physics

      巻: 21 ページ: 5983-6003

    • DOI

      10.5194/acp-21-5983-2021

    • 査読あり / オープンアクセス
  • [雑誌論文] Global Atmospheric Budget of Acetone: Air‐Sea Exchange and the Contribution to Hydroxyl Radicals2020

    • 著者名/発表者名
      W. Siyuan、Apel E.、Schwantes R.、Bates K.、Jacob D.、Fischer E.、Hornbrook R.、Hills A.、Emmons L.、Pan L.、Honomichl S.、Tilmes S.、Lamarque J.‐F.、Yang M.、Marandino C.、Saltzman E.、Bruyn W.、Kameyama S.、Tanimoto H.、Omori Y.、et al.
    • 雑誌名

      Journal of Geophysical Research: Atmospheres

      巻: 125 ページ: 1-23

    • DOI

      10.1029/2020JD032553

    • 査読あり / 国際共著
  • [雑誌論文] Atmospheric chemistry research in Monsoon Asia and Oceania: Current status and future prospects2020

    • 著者名/発表者名
      Tanimoto Hiroshi、Oanh Nguyen Thi Kim、Naja Manish、Lung Shih-Chun Candice、Latif Mohd Talib、Yu Liya、Salam Abdus、Cambaliza Maria Obiminda、Hien To Thi、Hlaing Ohnmar May Tin、Lestari Puji、Janz Hiranthi、Khokhar Muhammad Fahim、Adhikary Bhupesh、Keywood Melita、Wang Tao、Crawford Jim、Lawrence Mark、Melamed Megan
    • 雑誌名

      APN Science Bulletin

      巻: 10 ページ: 126-131

    • DOI

      10.30852/sb.2020.1246

    • 査読あり / オープンアクセス / 国際共著

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公開日: 2021-12-27  

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