研究課題/領域番号 |
17KK0016
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研究機関 | 国立研究開発法人国立環境研究所 |
研究代表者 |
谷本 浩志 国立研究開発法人国立環境研究所, 地球システム領域, 副領域長 (30342736)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2023
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キーワード | 大気化学 / 海洋有機物 / 硫化ジメチル / 地球観測 / モデリング |
研究実績の概要 |
海洋生態系は揮発性有機化合物(VOC)の重要な発生源の一つで、太陽光があたる海洋表層は含酸素揮発性有機化合物(OVOC)の重要な発生源の一つである。海洋バクテリアが VOCの分解に寄与することは広く知られていたが、バクテリアによるVOCの生成については依然として知見が限られている。本研究でVOC生成における海洋バクテリア群集の潜在的な役割を評価するため培養実験を行ったところ、2つのOVOCと4つの含硫黄揮発性有機化合物(SVOC)の生成が観測された。バクテリアの増殖期にアセトアルデヒドの生成が観察されたが、一方で、アセトアルデヒドの分解速度はその生産速度の3倍以上であった。定常期には、バクテリアによるアセトン、メタンチオール、DMS、ジチオギ酸、ジメチルジスルフィドの生成が観察され、これらは細菌の二次代謝産物として生成されたと考えられた。アセトンの生成速度は、分解速度よりもはるかに高く、海洋バクテリアは、アセトアルデヒドの分解だけでなく、アセトンの生成にも寄与していることが示された。また、バクテリア由来の海水溶存有機物(DOM)であるB-DOMが表層海水においてOVOCの発生源である可能性があるのではないかと考え、その可能性を調べた。実験室において天然のバクテリアに光照射することでB-DOM を生成したところ、観察された優勢なバクテリアは、ビブリオ科のものが優勢であった。B-DOMへの光照射により生成されたOVOCはアセトアルデヒドであり、アセトンではなかった。このことは、B-DOM は全球的な海洋表層水において、アセトアルデヒドの生成には重要であるものの、アセトンには重要ではないことを示唆していた。また、アセトアルデヒドは、B-DOM の光分解によってB-DOMから生成されている可能性があることが示唆された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
当初予定していた国際共同研究は概して進んだが、新型コロナウィルスによる渡航制限のため、現地に滞在して共同で解析や議論をすることができず、国際共同研究と相補的な解析や、さらに発展させるための議論が遅れている。
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今後の研究の推進方策 |
他国の研究者によって得られてきた最近のデータとも統合することで、国際的なデータベースとし、アップデートする仕組みを作る議論を始めていく。
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