研究課題
海洋表層から大気中には揮発性有機化合物が放出されているが、特に酸素を含む揮発性有機化合物(OVOC)は海水中の溶存有機物に太陽光が当たり生成すると考えられている。一方、そのメカニズムは明らかになっているとは言い難く、特に海洋バクテリアが果たす役割には不明な点が多い。そこで、海洋バクテリアの代謝により生成した溶存有機物に光照射を行うことで、OVOCの生成または分解プロセスを評価した。生成したバクテリア由来の溶存有機物は発色性有機物またはアミノ酸及びフミン様の蛍光性有機物であり、それらからアセトアルデヒド、アセトン、メタンチオール、硫化ジメチル、ジチオギ酸、ジメチルジスルフィドが生成することが分かった。このうちアセトアルデヒドにはバクテリアの増殖期に顕著な生成が観察され、バクテリア由来の有機物がアセトアルデヒドの発生源として重要である可能性が強く示された一方、アセトンの発生源には重要ではないことが示唆された。これまで世界各国の研究者により行われてきた海洋表層水のOVOC観測からは、アセトン及びアセトアルデヒドが検出されて濃度データが蓄積されてきているが、本実験解析の結果はグローバルな濃度分布や濃度変動に対する理解を深める結果となった。また、海水中濃度が最も多い硫化ジメチルについてはその生成・消失メカニズムが多く研究されてきたが、その代謝過程で生成するメタンチオールについて、プロトン移動反応質量分析計による大気・海水濃度の測定が進んでおり、硫化ジメチルに加えて、データの蓄積と統合化によるグローバルな濃度分布、濃度変動、フラックスの導出と、モデリングによる気候影響や硫黄循環の解析が必要である、との議論を進めた。なお、コロナ禍での渡航制限により渡航期間が180日に満たなかったが、データの共同解析並びに今後の推進方策の議論を進め、当初目的を達成して研究を完了した。
すべて 2024 2023
すべて 国際共同研究 (8件) 雑誌論文 (2件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (1件) 図書 (1件)
Atmos. Chem. Phys.
巻: 24 ページ: -
巻: 23 ページ: -
10.5194/acp-23-9229-2023