研究課題
本研究の目的は,沈み込み帯の前弧~火山弧(日本列島)とその背弧(北海道北部,サハリン,シホテアリン)における温泉・鉱泉の地球化学的分析・解析を通して,沈み込み帯~大陸域にかけてのユーラシア東縁全体での深部流体の分布や性質を系統的に把握し,その地学現象への役割の理解を深めることである.このために,【計画1】前弧,火山弧に加えて,ロシア科学アカデミーと共同で背弧・大陸縁辺の泉水を化学分析し,申請者らの開発した統計解析手法により成因を推定する.【計画2】流体移動・反応の数値シミュレーションによる統合モデルを構築し,上昇過程とフラックス推定を行う.平成30年度は,採択内定以降,海外共同研究者と話し合いや調整を行ない,おおよその目処が立ったので,11月に交付申請を行った.これに先だって,計画を遂行する準備として,8月に,ロシア科学アカデミーの共同研究者ら,化学チームの責任者と技術者,またロシア科学アカデミー極東支部のディレクターとも面談をした.海外共同研究者らとは,本研究を遂行する意義を共有し,詳細な計画を理解してもらった上で,調査地域の選定,手法,ターゲット元素,化学分析,データの取り扱い,解析方法等々の研究細部に渡って議論を行なった.また,調査・試料・分析に係る物品や人が国を行き来することになるため,ビザを始め,双方の所属機関内外の諸手続きや事項を共有し,頻繁に打ち合わせを行なっている.加えて,6月の極東域の調査に加わり,ロシアの調査手法や問題点を理解することで,今後の研究に必要な要素を把握することができた.1年有効なロシアのマルチプルビザを取得したが,180日中の90日以内と表される複雑なルールがあり,加えて,極東地域調査の制約もあるため,連続した長期滞在は不可能であることが分かりつつある.研究内容を遂行するために支障のない範囲で,計画的に滞在するよう工夫したいと考えている.
2: おおむね順調に進展している
計画1については,ほぼ計画通りに行なわれている.また,計画2に関わる統合データベースの作成のために,ロシア側の既存データを把握し,データベース化を始めていることから,やや進んでいると言える.しかし,長期滞在については具体的な日程が合意できておらず,マルチプルビザの具体的な使用方法について,ロシア大使館や在ロシア日本大使館に問い合わせるなど,滞在計画を立てるべく方々と調整を続けている状態である.
次年度以降も計画通りに遂行すべく,打ち合わせや議論を密に行ない,意思疎通をしっかり取りながら,調査・分析を行いつつ,実験を並行して進めたい.ユーラシア東縁全体での深部流体の分布や性質を系統的に把握し,その地学現象への役割の理解を深めるという本研究の目的のために,できるだけ多くのデータを入れた統合データを得ることを目指している.
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すべて 雑誌論文 (5件) (うち査読あり 5件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (12件) (うち国際学会 5件、 招待講演 2件)
Comptes Rendus Geoscience
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地学雑誌特集号
巻: 印刷中 ページ: 印刷中
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