研究課題/領域番号 |
17KK0018
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研究機関 | 国立研究開発法人産業技術総合研究所 |
研究代表者 |
中村 仁美 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (60572659)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 深部流体 / ユーラシア / 大陸縁辺 / 沈み込み帯 / 地下水 / 温泉水 / スラブ |
研究実績の概要 |
本研究の目的は,沈み込み帯の前弧~火山弧(日本列島)とその背弧(北海道北部,サハリン,シホテアリン)における温泉・鉱泉の地球化学的分析・解析を通して,沈み込み帯~大陸域にかけてのユーラシア東縁全体での深部流体の分布や性質を系統的に把握し,その地学現象への役割の理解を深めることである.このために,【計画1】前弧,火山弧に加えて,ロシア科学アカデミーと共同で背弧・大陸縁辺の泉水を化学分析し,申請者らの開発した統計解析手法により成因を推定する.【計画2】流体移動・反応の数値シミュレーションによる統合モデルを構築し,上昇過程とフラックス推定を行う. 令和元年度は,【計画1】の遂行のために,ウラジオストクに滞在しながら,ロシア科学アカデミー極東支部の研究者や技術者らと,議論や打ち合わせを繰り返し行った.本研究の遂行のためには,受け入れ研究者側の協力が不可欠であるが,ロシアでの滞在や研究に係る手続きや進め方は日本とは大きく異なり,頻繁に予告なく変更するため多くの問題が生じる.調査・試料採取・分析・実験に必要な物品の輸送にも多くの困難があり,社会背景の違いを痛感するが,ユーラシア東縁域での流体研究の科学的意義を確認・共有し,話し合いを重ねることで,一つ一つ対処しながら進めている.また,本研究に関連し,2019年6月にサハリン南部域においてロシア側と合同調査を行い,流体の分布と水質について把握したことで一定の成果を得た.
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
4: 遅れている
理由
【計画1】については,試料が届かなかったため支障が出ている.また,当初から実験のために必要な経費をロシアへ送る予定であり,共同研究者のいるモスクワ大学を経由するという案で進んでいたが,1年強に渡る再三の調整の結果,最終的に不可となった.従って,ロシアでの実験を断念し,国内で行う方向で調整を進めている.【計画2】に関わる統合データベースの作成のために,既存データをロシアの文献から抽出し,データベース化を進めた.これをロシア側に確認している段階であることから,予定通りと言える.しかし,マルチプルビザの期間が切れているので渡航・滞在の為に再取得をする必要があるが,コロナ流行のため,ロシア科学アカデミーからの招聘状の発行は許可されず,また,2020年5月末の現時点で,大使館でのビザ手続きの受付は中止となっている.研究内容の遂行に支障がないように最大限工夫したいと考えている.
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今後の研究の推進方策 |
コロナ流行の影響で渡航については大きな変更が生じると思われるが,できるだけ研究内容に支障がでないように,国内で実験を行うように移行していくつもりである.また,現時点までに得られているデータに基づいて,論文化を行う方向で議論を進めることで,一定の成果を上げることに重点を置く.これらの方針に基づき,受け入れ研究者らと打ち合わせや議論を密に行ない,意思疎通をしっかり取りながら,ユーラシア東縁全体での深部流体の分布や性質を系統的に把握し,その地学現象への役割の理解を深めるという本研究の目的を達成させる.
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