本研究は、近現代イギリスにおける人と動物との関係史を探究するものである。基幹部分に関する海外での史料調査はすでに終了しているため、2021年度はこれまでの研究成果を整理、統合と、それに基づいた論文執筆、口頭報告に注力した。具体的には、(1)2019年度にベルリンに滞在した際に参加したLogistical Natures Workshopでの研究報告が、その後のワークショップ企画運営者・参加者との議論を経て、他の報告とともに国際学術誌の特集号での発表を目指すことになり、原稿を提出していたが、査読結果が得られたため、それに基づき改稿し、年度末までに提出した。順調に進めば、2023年度中に掲載される予定である。(2)最終的な研究成果の一部を、年度末に開催された『ヒトと動物の関係学会』において、シンポジウム「どこまでが動物なのか?:人文学から考える」として発表した。動物という言葉から想起される具体的な動物には多様性や伸縮性があることをふまえ、そこに食虫植物や、神話に登場する幻獣や、感情を実装したロボットなども含めて、さまざまな思考実験を繰り広げることで、わたしたちの動物認識を問い直すという趣旨のシンポジウムであった。また、『ヒトと動物の関係学会誌』63号には、これまでの成果をふまえた巻頭言を寄せることができた。そのほかにも、書評1点、論文集に2点の論文を寄稿することができた(うち1点は、2023年2月に校了し、2023年度中に刊行予定である)。十分な成果が得られたと考える。
|