研究課題/領域番号 |
17KK0023
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研究機関 | 岡山大学 |
研究代表者 |
鈴木 真太郎 岡山大学, 社会文化科学研究科, 講師 (80767757)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | 自然人類学 / 考古人骨研究 / 古代マヤ / 古代メソアメリカ / 古代アメリカ / 文明周縁地 / 移民動態 |
研究実績の概要 |
令和元年度は平成30年度の現地調査で取得したすべての巨視骨学鑑定情報をデータベースに統合することができた。また国内外の様々な研究機関で行ってきた多様な安定同位体の分析結果も全て取り揃えることができた。現在は安定同位体の分析結果をデータベースに組み込んで、考古コンテクスト情報、巨視骨学鑑定情報と複合して、全体の考古学的な解釈を進めている。結果として、暫定的な所見ではあるが、古代マヤ文明圏各地で活発な移民流動が認められる一方、地域や時代によって一定の傾向が認められることがわかってきている。例えば、パレンケ遺跡では先行研究(コパンやグアテマラ南海岸)と同様の移民流動が見られる一方、周辺都市であるチニキハでは差異が認められている。またコパンにおいても先行研究で扱ってきたグループとは時代の違うグループで、「非常に限定された移民流入」という新しいパターンが検出されている。今後より詰めた検証、議論が必要になることは言うまでもない。しかし、ここまで広域、大量の試料を安定同位体で分析した移民動態の研究は、マヤ文明圏では本研究が唯一無二である点は特筆に値する。 また、平成30年秋にメキシコで開催した国際シンポジウムの内容もスペイン語、英語で国際的に出版する準備を進めた。本研究でも骨学や安定同位体などの分析結果を考古学コンテクスト上で適切に解釈するための鍵となるアーキオタナトロジーの総合的、本格的な専門書であり、15本程度の論文が収録される予定である。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
本研究の成果を盛り込んだ国際シンポジウムの論集をスペイン語、英語にて全世界を対象に出版し、本研究に一定の結論を出す予定で業務を進めている。しかし、こちらの査読、編集のプロセスが若干遅れている。古い図面の整理や専門テキストの翻訳など煩雑な作業を多く含み、また関係者も日本、メキシコ、フランス、米国、スペインと各国に散らばっているため調整に若干の困難を来している。
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今後の研究の推進方策 |
骨学鑑定、考古コンテクスト情報の収集、安定同位体分析はすべて完了しているため、個々の所見については随時議論を深め、主に英語国際ジャーナルでの発表を進めていく。一方で一つの区切り、集大成としてジャーナル論文とは別に上記のような国際シンポジウム論集の出版準備も進めている。現状を鑑みれば令和2年度中には少なくとも1冊(スペイン語版)の出版が見込める。
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