研究課題
本国際共同研究では、冷戦下の平壌とソウルが対立を前提とする依存関係のもとで都市空間を変容させてきたと捉え、その相関メカニズムを建築・都市史研究として解析している。研究手法としては、2018年度後半から2019年9月末まで漢陽大学に滞在し、同大学建築学部の韓東洙教授らとともに共同研究体制を敷き、研究内容のブラッシュアップ、共同踏査、資料の共有などを頻繁に行いながら進めた。そしてその韓国滞在以後も、韓国滞在で培った研究基盤を足場として、韓東洙教授や徐東千副教授らとの研究上の連携を保ちつつ、論文の共同執筆などを進めてきた。研究の観点として、平壌・ソウル両都市の都市空間構造、国際政治・経済的背景の差異、両都市の歴史的な空間形成に対する日本の関与、独立後の象徴的建造物の建設技法などに注目しており、これまでは平壌およびソウルの重要な建築家らの情報を収集するとともに、平壌やソウルの重要施設や地域を複数箇所設定し、そこに関連する資料を集めてきた。2020年度はコロナ禍による影響を大きく受けたが、これまでの研究基盤をうまく使うことでウェブ上での資料分析や議論を進め、研究論文や発表を多く行うことができた。特に徐東千副教授とは、日本建築学会の査読論文集に論文を2本投稿し、うち1本は英語論文として国際的な関心を集めることができた。また、各種学術研究会での発表や、一般学術誌への論文投稿など、精力的に研究発表を行うことで、本研究課題の一定のプレゼンスを内外に示すことができたと考えている。
2: おおむね順調に進展している
コロナ禍のなかで、ソウル滞在で構築した研究体制をうまく活用・発展させながら、共同研究を推進することができた。
国際共同研究体制での研究の充実と拡大を行うために予定していた共同調査や共同のワークショップなどは、コロナ禍のためにできなかった。そのため、昨年度収集した研究素材を共同で分析し、研究を進めてきたわけだが、それがうまくいき昨年度は多くの成果を出すことができた。そのため、本年も同様の研究体制のなかで臨機応変に状況に対応していきたいと考えている。また、課題最終年度となるために、これまでの研究内容を一つでも多く発表し、国際共同研究の重要性と意義を、研究テーマ全体の成果として訴えていきたい。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (3件) (うち国際共著 2件、 査読あり 2件、 オープンアクセス 2件) 学会発表 (2件) (うち国際学会 1件、 招待講演 1件)
Japan Architectural Review
巻: Vo.4, Issue 1 ページ: 155-167
10.1002/2475-8876.12202
日本建築学会計画系論文集
巻: 第85巻、第770号 ページ: 943-953
10.3130/aija.85.943
思想
巻: 1161号 ページ: 38-61