本研究の活動開始の時期より新型コロナウイルスが流行したため、研究実施において様々な障害が発生した。本来の2020年3月の渡航を断念した後、2022年10月末に渡航できたが、研究条件や各方面における状況の変化によって渡航期間が当初の1年間から半年間に短縮せざるをえなかったこと、渡航後も中国のゼロコロナ政策や後の感染拡大のため3ヶ月以上北京から出られず、北京大学も封鎖される状況も発生したこと、さらに実地調査においても共同研究者とうまく連携できなかったことなどにより、研究の進展に支障をきたした面が多々あった。 ただ、かかる状況においても、渡航待機中に共同研究者の市来氏と周偉洲氏の吐谷渾墓誌に関する論文の共訳および最新の考古調査の情報を整理し発表することができた。また渡航期間の最後の約2ヶ月間に最も注目していた楡林市の古代碑刻芸術博物館等の新設博物館や銀州故城・青海省都蘭熱水墓群・伏俟城遺跡・甘粛省武威吐谷渾王陵墓群地区等へ調査に行くことができたのは不幸中の幸いであった。帰国後は体調不良が続き研究の進展にやや支障が出たものの、今年度はこの調査について、新型コロナ流行後の中国での実地調査の状況やノウハウ等の情報も加え、第57回中国中古史研究会で「陝西省および甘粛・青海省の吐谷渾・党項関連文物遺跡の調査報告」を口頭発表し、この際、帰国中だった市来氏にも参加を要請しコメントをいただいた。また関連する発掘報告の情報をもとに、唐代史研究会夏期シンポジウムで「朔方軍解体期の朔方軍蕃部の動向」を口頭発表した。 本研究の目的の一つには中国の若手研究者との交流・関係構築も含まれるが、これも大きく制限された。それでも、対面やメール等で直接情報交換を行ったり、現地調査において協力してもらうなど、一定の関係構築に至ることができた。
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