2020年は、本研究の成果を英語で執筆し、書籍化のための下書きを完成させた。これは、2018年に日本語で出版した『香港カトリック教会堂の建設』を英訳し、さらにその後の研究成果を追記したものである。概要は以下である:香港のカトリック教会堂空間が生成された経緯を、歴史・社会的側面から分析し解説した。香港の教会堂は、特に戦後、土地供給制限や地価高騰という経済的制約を受け、宗教活動専用の空間を持つことが難しくなり、学校や福祉施設と、土地や空間を共用することで、宗教活動空間を確保してきた。香港の中国への返還がこうした習慣を一変させた。教会は宗教活動専用の教会堂建築を返還前に建設しようとした。2000年代以降は、地価高騰で独立型の教会堂建設は困難となり、戦後に一般的であった、学校や公共施設と教会堂との併用への回帰を見せている。2019年に起きた民主化運動のさなかには、一部の教会が教会堂空間を休憩所、避難所として開放したことに、親政府派が反発し、教会内部でも意見が対立した。 この英文原稿は、2021年度に専門家に校閲を依頼する予定で、2022年度を目標とし、書籍として出版を準備中である。 2020年度はコロナウイルス感染症流行により海外出張ができず、予定していた香港での現地調査が実施できなかった。 2020年10月に、主に香港市民を対象としたオンラインセミナーを開催した。本研究の成果である「アッシジの聖フランシスコ教会堂の歴史と建築」について英語で講演した。
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