研究課題/領域番号 |
17KK0027
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研究機関 | 九州大学 |
研究代表者 |
福島 綾子 九州大学, 芸術工学研究院, 准教授 (50432878)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2022
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キーワード | カトリック / 教会堂 / 宗教空間 / 政教関係 / 香港 |
研究実績の概要 |
感染症流行のため海外渡航ができず、予定していた香港・台湾などでの現地調査はできなかった。しかし、資料調査と分析、研究成果の公開を進めることができた。 本研究課題の成果である自著『香港カトリック教会堂の建設』を英訳した。英語版タイトルはBuilding Catholic Churches in Hong Kong。本書は、香港において、教会堂建築がどのように展開したかの通史を示した。本研究の目的のひとつである宗教空間が政治的な要因からも生成される過程を詳しく論じた。また、一般の信徒が、香港社会の成熟につれて、教会堂の建設を主体的に担い、さらに建設活動によって霊的成長を深めていく姿とその意味を論じた。英訳原稿を校閲者に校正・編集依頼し、校閲原稿が完成した。この英語版を出版するため、出版助成に応募し、助成を得ることができ、出版準備を開始した。本書の大部分の内容は2019年までであるが、香港情勢は2019年から2022年にかけて急展開した。教会を取り巻く情勢も大きく変化したため、この期間の教会にかかわる情勢、教会指導者に対し政治的圧力が加えられ、中国政府が香港のキリスト教会を管理・監視する条例導入を検討していること、教会堂空間の自立した利用・開放が困難になりつつあること、香港教区による教会堂建設事業実施状況を書籍原稿に追記した。 2021年度も、香港の政治・社会情勢は大きく展開した。これらの情報を書籍やメディア報道などから収集、分析した。この成果を、2022年3月におこなわれた国際研究集会International Workshop On Radicalism in Theory and Practiceにおいて、研究発表The Churches as asylum in the pro-democracy movement of Hong Kongとして発表した。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
感染症流行により海外渡航が制限され、予定していた香港、台湾などでの現地調査が実施できなかった。これにより、現地調査については停滞が生じた。
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今後の研究の推進方策 |
2022年度は、本研究の成果である英語書籍Building Catholic Churches in Hong Kongを出版する。 また、香港の教会組織に対し香港政府がどのような動き、条例制定などを見せるのか、注視し分析をおこなう。香港・台湾にて現地調査が肝要であるが、感染症流行のため、海外渡航は2022年度も引き続き困難と思われる。メディア報道などの情報をもとに分析する。2020年に香港国家安全法が施行された。同法に抵触する行為の定義は曖昧で、教会関係者も発言や行動には慎重になっている。したがって、本研究の実施によって得た情報を成果として発表することにも慎重にならざるを得ない。他者に被害や不利益を与えることのないよう注意しなければならない。研究成果発表のタイミングにも慎重になる必要があり、ただちに発表できない情報も多くある。適切なタイミング、方法を見極めていく。
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