研究課題
本研究では南九州の旧石器から縄文草創期・早期移行期における人類の技術と行動の復元について、米国の三つの大学の専門家と国際共同研究を通じ、計量考古学的諸分析を体系的に行い、より精度の高い総合的な結果を得る。(1)カリフォルニア大学ロサンゼルス校コーツェン研究所では土器薄片の鉱物分析を行う。(2)ミズーリ大学実験原子炉研究施設では土器の放射化分析を行う。これら鉱物分析と放射化分析の結果と合わせて確度の高い産地同定をし、生産と流通のパターンから、土器製作者と使用者の定住度と移動度の関係および移住の可能性を推定する。(3)アリゾナ大学物質科学科では成形技法と粘土の物性の定量的・定性的分析を行い、製作者の技術選択の理由と行動背景を推測する。本年度は、(1)カリフォルニア大学ロサンゼルス校コーツェン研究所客員准教授の土器専門家であるハンス・バーナード博士の研究室において三角山I遺跡出土の縄文時代草創期土器薄片分析を行った。また、カリフォルニア大学フラトン校人類学科、カール・ウェント博士の研究室においても同様の分析を行った。この他(2)ミズーリ大学実験原子炉施設に縄文時代草創期三角山I土器サンプルを提出し、実験原子炉施設のジェフ・ファーガソン博士と試料準備方法、背景資料について打合せを行い、次年度の分析準備を周到に行った。(3)また、アリゾナ大学パメラ・バンディバー博士と鹿児島および東京において縄文時代草創期(および早期)の土器分析を行った。
2: おおむね順調に進展している
理由:(1)カリフォルニア大学ロサンゼルス校コーツェン研究所およびカリフォルニア州立大学フラトン校において土器薄片分析を開始し、約60点の土器薄片の大まかな含有物組成を把握することができたこと。(2)ミズーリ大学原子炉施設に送るための土器試料を計量し、データの整理を行い、個々の試料背景を記述した後、放射化分析を開始する作業を行った。放射化分析の実験自体は3月に終了し、結果の統計的分析は次年度行うこととなった。(3)実際にパメラ・バンディバー博士と共に南九州に収蔵されている縄文時代草創期(および早期)土器遺物の観察を行い、分析結果の提示方法の改善を行った。
今後は、以下の3点を実施する。(1)カリフォルニア大学ロサンゼルス校・コーツェン研究所(およびカリフォルニア大学フラトン校)において薄片分析を完了し、土器の産地同定をする。更に薄片試料数(遺跡数)を増やし、それらの薄片試料分析も行う。(2)ミズーリ大学実験原子炉施設において土器の放射化分析結果から統計的な結果を得、薄片分析の結果と合わせ、産地同定を行うこと。また、放射化分析試料(遺跡数)増やし、同様の分析を行う。(3)アリゾナ大学物質科学科においてゼロラジオグラフィーやCTスキャンを行い、土器の成形方法の確認を行う。これらの大学で行った分析結果を国際学会(International Union for Quaternary Research およびSociety for American Archaeology)で発表し、国際ジャーナルに投稿すると。
すべて 2019 2018
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 3件、 査読あり 3件、 オープンアクセス 1件) 学会発表 (4件) (うち国際学会 4件、 招待講演 2件)
研究紀要・年報 縄文の森から
巻: 11 ページ: 印刷中
PaleoAmerica
巻: 4 ページ: 267-324
DOI: 10.1080/20555563.2018.1563406
Studia Archaeologica Instituti Historiae Et Archaeologici Academiae Scientiarum Mongolici
巻: XXXVII ページ: 5-16
鹿児島考古
巻: 48 ページ: 61-80