研究課題
本研究の目的は米国の大学研究期間と連携し、南九州の縄文時代草創期・早期の土器技術を計量考古学的な手法で分析することである。本年度は、基盤Cの課題とも関連し、主に(1)論文執筆を行い、(2)旧大陸の土器の起源に関する国際誌特集号の編集を行い、(3)オンラインの国際学会にて発表し、(4)南九州において補足データを得、(5)比較の目的で北海道の縄文時代草創期土器の分析を行った。国際誌に計量考古学的な手法を用いた論文を3本、また、国内誌に1本発表した。国際誌では、鹿児島県中種子市三角山I遺跡の土器および原材料(粘土、砂、岩石)の薄片分析と土器薄片のEPMA分析から産地同定を行い、土器の生産・流通を推測し、後期更新世の海面上昇および南九州のバイオームデータをふまえ、土器の生産パターンから、狩猟採集民の定住度と交換の関係を推定した。本論文は、国際共同研究加速基金の課題研究に加わった米国の学者との共著で執筆した。また、バイカル湖以東の土器の発生年代を層序、放射性炭素年代および続成作用を検証することにより推測し、南米コロンビアの完新世の土器胎土に含まれるジルコンを使用した新たな計量考古学的産地同定方法についても国際共著論文を執筆した。国内誌には鹿児島県西之表市鬼ヶ野、奥ノ仁田、および二本松遺跡の縄文時代草創期土器のゼロラジオグラフィーを使用した成形方法および技術に関する国際共著論文を執筆した。また、アメリカ考古学会において三角山I遺跡の土器の放射化分析結果を発表し、国際誌特集号では計量考古学的分析から得られた結果の含まれる、旧大陸の多様な地域の土器の起源に関する、世界の様々な地域を拠点とする学者の投稿論文の編集を行った。また、西之表市および中種子町教育委員会において土器および石器の補足データを得、東京大学の夏木大吾氏により発掘された北海道縄文時代草創期土器の視覚的分析も行った。
2: おおむね順調に進展している
当初の計画通り、(1)計量考古学的手法を用いた南九州の初期の土器の国際共同研究を行い、国際誌に発表し、(2)ユーラシア北東部を中心とした旧大陸の土器の起源に関する、計量考古学的手法を用いた論文を含む国際誌特集号の編集を国際共著で行い、(3)計量考古学的方法を使用し、南九州の初期の土器分析を海外の共同研究者とともに国内誌に発表した。また、ジルコンを使用した新たな計量考古学的産地同定方法を海外の地質学者と発表し、バイカル湖以東で長く議論されてきた土器発生年代に関し、地考古学的分析手法を用いて炭素測定年代が続成作用に影響されている可能性も指摘し、論文を国際誌に執筆した。
今後は、国際共同研究加速基金から得られたデータをさらに国内外の雑誌および学会において発表していきたい。また、新たに生まれた研究の問いを国際的な共同作業により、解明していく予定である。
すべて 2021 2020
すべて 雑誌論文 (4件) (うち国際共著 4件、 査読あり 4件) 学会発表 (3件) (うち国際学会 2件)
Quaternary International
巻: 0 ページ: 1-17
10.1016/j.quaint.2021.02.002
鹿児島考古
巻: 50 ページ: 241-254
巻: 0 ページ: 1-24
10.1016/j.quaint.2020.10.009
Archaeometry
巻: 62(3) ページ: 439-468
10.1111/arcm.12532