本研究の目的は科研費(基盤研究C)の研究計画と関連する、南九州の後期旧石器から縄文時代草創期・早期移行期における人類の技術と行動の復元について、 米国の大学機関の共同研究者と連携し、土器の計量考古学的処分析を行い、総合的な結果を得ることである。本研究期間中、カリフォルニア大学ロサンゼルス校コーツェン考古学研究所において土器薄片の鉱物分析を、ミズーリ大学実験原子炉施設の研究者と協力し土器の放射化分析を、アリゾナ大学物質科学科において土器の成形方法の分析を行った。分析結果から、国内誌に成形方法を中心とした土器技術に関する論文(査読有り)を3本、国際誌に土器の技術、鉱物分析および放射化分析結果に関する論文を4本(査読有り3本、査読なし1本)と旧大陸の土器の起源に関する特集号1冊を出版した。国際学会では本研究に関連する内容でセッション幹事を2度、発表を7度、招待講演を3度行った。本年度は種子島中央部に位置する三角山I遺跡の縄文時代草創期土器の放射化分析結果から土器の産地同定を行い、生産と流通を推測した国際誌論文を1本(査読有り)発表した。この論文の重要性は、後期更新世終末期に作られた世界的に最古級の土器の産地同定結果を得、土器の生産と流通のパターンから狩猟採集民の定住度は高かったものの、最小限ではあるが、土器(または土器に入れた産物)の航海を含む可能性のある長距離交換も行っていたと推測したことである。本年度はこの他、世界各地の学者が論文執筆を行う旧大陸の初期の土器(セラミック)の発生理由、使用法、技術と年代に関する未解決の問題と新たな問題に関する国際誌の特集号を組み、それに関する編集後記も出版し、このテーマに関する重要な貢献をした。また、国際学会では種子島北部に位置する鬼ヶ野遺跡および奥ノ仁田遺跡の縄文時代草創期の土器の製作地と流通のパターン、技術に関する発表(招待有り)を行った。
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