研究課題/領域番号 |
17KK0029
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研究機関 | 東京都立大学 |
研究代表者 |
前田 弘毅 東京都立大学, 人文科学研究科, 教授 (90374701)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2021
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キーワード | ユーラシア / ジョージア(グルジア) / コーカサス / マイノリティ・エリート / サファヴィー帝国 / 通訳 / 奴隷軍人 / ミドルマン |
研究実績の概要 |
2020年度は、前年度の海外実地調査と長期滞在の経験を踏まえながら研究を進めた。特に英語による論考執筆に力を注いだ。成果は近年中に公表される予定である。また、コーカサス現地においても、オンラインで国際学会における発表を二回行った。コーカサス出身者の歴史的経験はユーラシア大陸を広く覆うものであった。アフシャール帝国の創設者ナーディル・シャーとの会話を老年のエレクレ二世が家族に話し、やがて孫のアレクサンドレ・オルベリアニがこれを書き残した。エレクレはナーディル・シャーのインド遠征に同行し、婚姻関係も一族で有した。今後こうした歴史的ネットワークについて、史実を一層掘り起こした上で、より探求する必要があろう。これに関連して、2019年3月に行ったイラン・フーゼスターン地方への現地調査をまとめた小論考を執筆した。ジョージア/グルジア系ディアスポラのイランにおける複雑な歴史的活動はいまだほとんど知られていない。引き続き、調査を継続する予定である。また、歴史的ネットワークを探求する本課題であるが、現在のコーカサス地域状況についても、第二次カラバフ戦争の勃発に関して論考を記した。このほか、本研究課題のために2019年度に客員フェローとして長期滞在したプリンストン大学における新型コロナウイルス対応に関する小論など、アメリカ社会と大学に関する知見を披露する機会も得た。さらに市民向け講座などでコーカサス史と政治について講演することなど、知的還元についても積極的に行った。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
研究は全体としては順調に進んでいるが、新型コロナウイルスの世界的な蔓延にともない、2020年度は海外訪問と調査をまったく行うことができなかった。世界的な研究交流とネットワーク形成は大きな課題であり、2019年度のジョージア/グルジア・イリア大学と米・プリンストン大学長期滞在中に培ったネットワークは維持することができたものの、現地訪問によって一層の強化を計ることができなかった。
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今後の研究の推進方策 |
新型コロナウイルスの蔓延の中、ヨーロッパなど、当初計画していた海外渡航が果たせない状況にある。オンラインでのコミュニケーションについては積極的に測っているが、現地での史資料の閲覧と収集、直接の対話によるコミュニケーションの促進をはかることが出来ない困難な状況にある。その中でも、英語による執筆活動の比重を増やすことで、研究成果を豊かなものとしながら、一層の研究ネットワーク強化の礎としなければならない。
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