研究課題/領域番号 |
17KK0030
|
研究機関 | 慶應義塾大学 |
研究代表者 |
迫 桂 慶應義塾大学, 経済学部(日吉), 教授 (60548262)
|
研究期間 (年度) |
2018 – 2022
|
キーワード | ageing / illness / care / children's literature / picturebooks / narrative / Japan / British children's books |
研究実績の概要 |
本研究課題は大きく二つの要素から成る。一つは、題目にある絵本の比較研究である(下記①)。これは、基課題で計画された内容の一部を、より大きく発展させることを目指すものである。もう一つは、同テーマ(ageing and illness)をより広い文脈(地域、ジャンル、メディア)で探求するものである(下記②)。研究連携関係構築も含め、基課題全体の発展を促す効果を狙うものである。 ②2019年に共同研究者と共催した国際シンポジウムを土台とした論文集(Contemporary Narratives of Ageing, Illness, Care)の編集作業を進めた。執筆者は複数国から集まっており、COVID-19の影響で執筆作業に遅れが出た。その結果、当初予定より遅れ、2022年1月に刊行された。本科研費の補助を受け、紙・電子媒体だけでなく、オープンアクセスでの刊行も行った。3月18日には、研究成果を周知する目的で、刊行記念イベントを学術集会(オンライン)の一部として開催した。論文集の紹介をし、複数の執筆者が担当章の紹介を行った。COVID-19は、各国社会と世界のレベルにおいて、既存の社会経済制度や文化価値の見直しの契機となっている。本書に収められた論考が、この流れに少しでも貢献することを期待する。 ①日英の現代児童絵本の歴史・比較研究を継続した。本年度は、日本の児童絵本研究の成果を書きまとめ、上記論文集に収めた。さらに、前年度収集したイギリスの絵本の分析も始め、現代社会が直面する環境問題に、世代間関係を描いた児童絵本がどう貢献しうるか、という新たな問いを設定した。児童文学をエコ・クリティシズムの視点からとらえる研究文献講読を行い、日本と英国の絵本各一点を選び、世代間関係と自然環境の描写に注目して分析を行った。
|
現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
上記②について、老年学と児童文学研究の接合をより深める目的で、エコ・クリティシズムの視点を導入した具体的な研究課題を計画しているが、進捗がやや遅れている。理由の一つは、エコ・クリティシズムの先行研究把握に時間を要していることである。エコ・クリティシズムは近年急速に発達した分野であると同時に、本研究代表者・共同研究者にとっては、新たに知識蓄積が必要な分野である。
|
今後の研究の推進方策 |
上述の通り、エコクリティシズムは先行研究の蓄積がかなりあり、さらに、発展中の分野である。そのため、重要な文献を把握し、かつ、本研究課題に関連の強い研究を見出し、調査するのに時間を要している。一方、先行研究がある程度把握できたため、今後の研究文献調査・購読と第一次資料分析をより効率的・効果的に行えると期待する。
|