本研究は、3年間の国際共同研究である。その初年にあたる本年は、申請者がこれまでに収集した一次史料を整理し、さらに最新の研究状況についても調査をすることで、渡航してからの作業を円滑に進めるための準備を固めることを主な目標に据えた。 この目標の下、まず本年は申請者の所属研究機関と渡航先海外機関それぞれと連絡を取り、これから申請者が渡航をするための重要な調整を行った。その上で、申請者がこれまで収集した一次史料の整理と最新の研究状況についても調査を進めた。その結果、本研究計画で扱っている事例が、イギリス帝国やアジア・アフリカ地域の歴史だけでなく、公文書管理という世界の様々な場面で今日問題になっているテーマについても重要な示唆を与えてくれる可能性があることが確認された。一般に、公文書の管理に関する議論では、公文書の作成・保管・利用に光が当てられることが多いが、それらの裏側にある現象、すなわち公文書の破棄については詳細に論じられることが少ない。公文書が破棄される場合には、その破棄という現象を詳細に検討するだけの証拠が残されないことが多いからだ。その点で言うと、本研究計画で扱っているイギリス帝国の例は、公文書の破棄に正面から光を当てることが出来る稀有な歴史的事例だと言える。こうした点について、本年は実証的な検討を進めるだけでなく、概念的な整理も行った。このことは、今後、渡航先海外機関との共同作業を推進していく上でも重要な基礎となる。
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