本研究は、実証的かつ地域横断的に、歴史認識や集合的記憶について本格的に検討しようという大きな潮流に貢献する。まず、当時のイギリス帝国全体に広がっていた心性を浮き彫りにする。それは、本国イギリスの植民地省のエリートだけでなく、各帝国に派遣されていた植民地官僚、また時には現地側の協力者にも脱中心的に共有されていた歴史認識、罪の意識、未来に向けた共通認識である。こうした分析は、他の近代帝国や諸国家による類似の事例との比較に発展する。さらに、こうした研究潮流は、集合的記憶と、その裏側にある集合的忘却をめぐる社会的な関心に対しても、実証的な知見を提示するものである。
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