研究課題/領域番号 |
17KK0037
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研究機関 | 筑紫女学園大学 |
研究代表者 |
川尻 洋平 筑紫女学園大学, 文学部, 講師 (70712206)
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研究期間 (年度) |
2018 – 2020
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キーワード | ウトパラデーヴァ / 『主宰神の再認識詳注』 / アビナヴァグプタ / 『主宰神の再認識反省的考察』 / 『ヴヤーキャー』 |
研究実績の概要 |
本研究は、後代の註釈文献や写本欄外註に散在するウトパラデーヴァ著『主宰神の再認識詳注』断片を蒐集することを通じて、そのテキスト全体を可能な限り復元することを目的とする。 2018年6月にフランス・パリ第三大学をへ渡航後、共同研究者であるイザベル・ラティエ博士と研究打合せを行い、写本情報や欄外註に含まれる『主宰神の再認識詳注』の情報を共有した。Chetan Pandey氏によって提供された写本から新たに回収された『主宰神の再認識詳注』断片は、認識章第八日課第10偈から行為章第三日課第八偈までを含む。この内、行為章第二日課についてはトレッラ博士(ローマ大学)が準備を進め、ラティエ博士は残りの箇所の校訂および翻訳を準備中である。 研究代表者は、その他の写本欄外註から回収される断片を調査している。これまでに同定されていた断片については、当該部分に対応するアビナヴァグプタの註釈も読解しながら、校訂テキストと翻訳を作成したが、検討の余地を残している。また『主宰神の再認識反省的考察』に対する南インドの註釈『ヴヤーキャー』に含まれる断片の蒐集も行った。カシュミールのOriental Research Libraryに所蔵されている写本の入手に関して、研究協力者の小倉智史博士の協力を仰いだ。同じく研究協力者の石村克氏には、写本欄外註の蒐集およびそのテキスト入力について協力も得て、欄外註の蒐集を進めた。 これらの研究成果の一部については、17th World Sanskrit Conferenceで研究発表を行い、パリ第三大学およびローマ大学で講演会を行った。『主宰神の再認識詳注』断片は、南インドの『ヴヤーキャー』にも僅かに含まれている。しかし、作者はその引用を『精神的認識主体の確立』と理解していることから、『主宰神の再認識詳注』が南インドへ伝承されたとは考えがたいことが確認された。
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現在までの達成度 (区分) |
現在までの達成度 (区分)
3: やや遅れている
理由
写本欄外註の蒐集に関して、検討すべき写本がさらに増加したことや、虫食いや画像の不鮮明さなどの理由により想定以上の時間を要している。『主宰神の再認識詳注』断片の試訳については、ほぼ完了しているが、テキスト校訂に関しては、新たな写本に含まれる断片を検討する必要性が残されている。一方で、写本蒐集に関しては、現状その存在が知られている資料についてはほぼ入手できたと考えられる。
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今後の研究の推進方策 |
新たに調査すべき写本資料も増えたことから、写本欄外註の蒐集完了が目下の急務である。したがって、写本欄外註の蒐集に関して、研究協力者を増員して対応する。蒐集された『主宰神の再認識詳注』断片の読解に関しては、定期的に情報共有しながら、進めていく。研究代表者は、すでに日本に帰国しているため、今後は長期休暇中に、フランスへ渡航あるいはラティエ博士やトレッラ博士を日本に招き研究会を開催することを計画している。
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